ホットバルーンアブレーションとは、バルーン(風船)内の液体を高周波で温め、その熱で肺静脈の周囲を「面」で焼灼して電気的に隔離する心房細動(AF)の治療です。日本の佐竹修太郎医師(葉山ハートセンター)と東レが共同開発した
日本発の技術で、製品名は「SATAKE・HotBalloon®カテーテル」。AFの引き金となる肺静脈を隔離する
肺静脈隔離(PVI)を、加熱バルーンで行う方法です。
原理:高周波でバルーン内の液体を温める
一般的な
高周波(RF)は先端の電極を組織に当てて「点」で焼灼します。ホットバルーンはここが異なり、バルーン内に満たした液体(生理食塩水+造影剤)を、中心のコイル電極から流す高周波でジュール加熱し、
温まった液体の熱がバルーン表面を介して肺静脈周囲を間接的に加熱・焼灼します。液体は撹拌ポンプで混ぜて表面温度を均一化し、表面はおよそ60℃前後・組織は70℃以下に管理するとされます。バルーンが入口にぴたりと接することで、周囲を一度に面で焼灼できます。
他のバルーンとの違い
バルーンで一括隔離する方法には、加熱以外に
クライオ(冷凍)や、内視鏡で見ながら照射するレーザーバルーンがあります。いずれも「点」でなく面で処理する点は共通で、
熱源(高周波の熱/冷却/レーザー)と当て方が異なります。使い分けは
焼灼エネルギー比較を参照。
バルーンの特徴:可変形で左房の形に追従
ホットバルーンのバルーンは弾力性に富むポリウレタン製で
変形しやすい(コンプライアント)のが特徴です。押し当てる圧や肺静脈入口の形に合わせて柔らかく変形し、密着しやすくなります。直径はおよそ25〜33mmの範囲で拡張でき、患者ごとに異なる入口サイズや形に追従しやすい設計です。
手技の流れと隔離の確認
- 大腿静脈からカテーテルを挿入し、心房中隔を越えて左房へ到達。
- バルーンを目的の肺静脈入口に誘導し、液体で拡張して密着させる。
- 高周波でバルーン内の液体を温め、周囲を面で焼灼する。
- 4本の肺静脈それぞれに対して行う。
焼灼後は多電極カテーテルやマッピングで、肺静脈が電気的に隔離できたか(信号が伝わらないか)を確認します。
適応と位置づけ
もともと発作性心房細動を中心に用いられ(肺静脈が主原因の発作性AFとバルーン治療は相性がよい)、その後
持続性心房細動へも保険適用が取得されています(2022年)。どの患者にどのエネルギーを選ぶかは、AFのタイプ・心房の大きさ・患者背景をふまえ医師が判断します。適応は改訂されうるため最新のガイドライン・添付文書で確認してください。
合併症とCEのモニタリング
肺静脈の周囲には注意すべき隣接臓器があります。
- 食道障害:左房後壁は食道と近接するため、熱による食道損傷に注意。対策として食道温度モニターを行う。
- 横隔神経麻痺:右側肺静脈付近では横隔神経が近く、加熱で一時的麻痺が起こりうる。横隔神経ペーシングで横隔膜の動きを監視する。
これらのモニタリングは臨床工学技士(CE)が関わる重要な場面です。食道温度、ペーシングによる横隔膜の動き、バルーン温度・出力の推移を注意深く見守り、異常の兆候をいち早く医師へ伝えます。
参考・出典
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