心臓補助循環装置のIABPについて解説

PCI
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IABP(Intra Aortic Ballon Pumping)大動脈内バルーンポンピングについて解説します。
  1. IABP(Intra Aortic Ballon Pumping)大動脈内バルーンポンピング
        1. IABPとは
  2. 冠動脈を流れる血流量について
  3. IABPの目的
  4. IABPの原理
    1. ヘリウムガスがバルーンの駆動に用いられている理由
  5. IABPによる効果
    1. ダイアストリック・オーグメンテーションdiastolic augmentation拡張期圧増強の効果
    2. シストリック・アンローディングsystolic unloading収縮減負荷期の効果
    3. IABPの効果まとめ
  6. バルーンのタイミング
  7. バルーン拡張タイミングが早すぎた場合の動脈波形
  8. バルーン拡張タイミングが遅すぎた場合の動脈波形
  9. トリガについて
  10. 可能な限りトリガは、心電図に同期させる理由
  11. バルーンサイズの選択
  12. バルーン留置位置
  13. バルーン留置位置
  14. バルーンの管理
  15. バルーンカテーテルの構造
  16. IABP 駆動装置
    1. GETINGE(MAQUET)
        1. MERA Corart BP3
    2. Teleflex : AC3 Optimus
        1. バルーンカテーテル
  17. TRANS-RAY PLUS
  18. 各種バルーンカテーテルについて
  19. 駆動装置の原理
  20. コンプレッサー方式について
  21. ベローズ方式について
  22. 駆動装置モニターの表示項目の例
  23. 保管時の管理について
  24. 適応(参考例)
  25. 絶対的禁忌
  26. 相対的禁忌(使用に際し慎重な検討が必要)
  27. 離脱 (参考例)
    1. 補助比率を下げる方法
    2. バルーンのガス容量を下げる方法
  28. Forrester分類
  29. 合併症
    1. 下肢の虚血
    2. 動脈損傷
    3. 大動脈分枝の血行障害
    4. 感染
    5. バルーンの損傷・破裂
    6. 出血、貧血、抗凝固に関する問題
  30. 生体情報信号の入力方法
  31. 心電図モニタトリガミスの原因となる要因
  32. 心電図モニタトリガミスの原因の対策
  33. 動脈圧モニタトリガーミスの原因
  34. 動脈圧モニタトリガーミスの原因の対策
  35. バルーン内圧波形
  36. ガス漏れ検出アラーム
  37. ガス漏れ検出アラーム
  38. 高圧アラーム
  39. トリガ不良アラーム
  40. ヘリウムボンベアラーム
  41. バッテリ電圧低下アラーム
  42. 電源異常アラーム
  43. オーグメンテーション圧アラーム
  44. 参考

IABP(Intra Aortic Ballon Pumping)大動脈内バルーンポンピング

IABPとは

IABP は Intra Aortic Ballon Pumping の略
大動脈内バルーンポンピングという。

心臓のポンプ機能が低下してる患者をサポートするための補助循環療法

大動脈内にバルーンカテーテルを挿入し、
心臓の拍動に同期して

インフレート(拡張)
デフレート(収縮)

させる。

下行大動脈内に挿入したバルーンカテーテルを心臓の拍動に合わせて拡張・収縮させることで心臓の補助を行う補助循環装置 

重症心不全や心原性ショックに適応
駆動装置を用いて、バルーンカテーテルをヘリウムガスで拡張・収縮させ圧補助を行う。

冠動脈を流れる血流量について

• 冠動脈の血流は心臓の拡張期に多く流れる。
• 心臓の拡張期に冠動脈の血管が拡張する。
• IABP装置はこの拡張期にバルーンを膨らませて、拡張期血圧を上昇させ冠血流量を増加させる。

IABPの目的

心筋への酸素供給を増加させ、心筋の酸素消費量(需要)を減少させる
心拡張期:パルーン膨張  → 拡張期圧の上昇
心収縮期:パルーン収縮  → 収縮期圧の減少

IABPの原理

下行大動脈内にバルーンを留置する。

心電図や大動脈圧波形に同期させヘリウムガスで心臓の拡張期(diastole)にバルーンを膨張(inflation)させる。

これにより心蔵の拡張期圧が上昇し、冠動脈血流が増加する。

また、心臓の収縮期 (systole)にはバルーンを収縮 (deflation)させる。

これにより心室の後負荷を軽減する。
また、心筋酸素消費量を減少させる。

ヘリウムガスがバルーンの駆動に用いられている理由

ヘリウムガスは気体の中で、水素ガスに次いで軽い気体(分子量:4)あり、ガス移動時の抵抗が少ない応答性がよい。(水素ガスは、爆発の危険性があるため採用されていない)
IABPは、心臓の拡張期に拡張、収縮期に収縮させることよって効果を得る療法なので、応答性が良いヘリウムガスが用いられる。
しかし、ヘリウムガスは血液に非常に溶けにくいためバルーンの破裂には注意する必要がある。

IABPによる効果

• ダイアストリック・オーグメンテーション:拡張期圧増強(diastolic augmentation)
心拡張期にバルーンが膨張することにより、拡張期圧の上昇による冠動脈血流量の増加を図り、虚血に陥った心筋への酸素供給が増加する。

• シストリック・アンローディング:収縮減負荷期(systolic unloading)
心収縮期にバルーンが収縮することにより、駆出量増加、後負荷の軽減により心筋酸素消費量が減尐する。

ダイアストリック・オーグメンテーションdiastolic augmentation拡張期圧増強の効果

    バルーンの拡張により

疑似的にバルーンの容量分だけ血液量が増えた状態となる
           ↓
        拡張期圧が上昇
           ↓
 バルーンの容量分だけ血液が押し出され他臓器へ流れ込む
           ↓
        冠血流量の増加
     (心筋酸素供給量の増加)
・冠動脈血流量の増加
・平均動脈圧の上昇

シストリック・アンローディングsystolic unloading収縮減負荷期の効果

           バルーンの収縮により

 疑似的にバルーンの容量分だけ血液量が減少した状態となる
                  ↓
              拡張末期圧が低下
                  ↓
 しぼんだバルーンの容量だけ少ない力で血液が駆出できる
            左室後負荷の軽減
         (心筋酸素消費量の減少)

・アフターロードの軽減
・心仕事量の軽減
・心筋酸素消費量(MVO2)低下

IABPの効果まとめ

・冠動脈血流量の増加
・平均動脈圧の上昇
・後負荷の軽減
・心仕事量の軽減
・心筋酸素消費量の減少

バルーンのタイミング

下行大動脈内に留置されたバルーンが、駆動装置より供給されるヘリウムガスにより、心臓の拡張期(diastole)に膨張(inflation)させ、心臓の収縮期(systole)に収縮(deflation)させる。
このバルーンの拡張・収縮のタイミングは患者自身の心電図波形や動脈圧波形により決定される。
• バルーンの拡張は心臓の拡張初期(大動脈弁の閉鎖直後)に合わせる。
• バルーンの収縮は心臓の駆出直前(左心室の収縮の直後)に合わせる。
動脈圧波形では、大動脈弁の閉鎖時(心臓の拡張開始時)にdicrotic notch(重複切痕)ができる。
拡張タイミングは大動脈圧波形のdicroticnotchに合うように調整する。
収縮タイミングはバルーン作動時の拡張末期動脈圧が最低値を示すように調整する。
調整時はバルーン先端圧(大動脈圧波形)を用いてバルーンの駆動を一時的に1:2にして行うことで、波形上適正なタイミングの視認が可能である。
アシストなしの状態からアシスト1:2の状態で拡張・収縮をさせタイミングを合わせる。その後アシストを1:1に変更する
理想的なIABPの拡張・収縮タイミング時の動脈波形

バルーン拡張タイミングが早すぎた場合の動脈波形

ディクロティックノッチ前にバルーンが拡張している。
その場合、心臓の後負荷増大、大動脈弁早期閉鎖、逆流の可能性がある。

バルーン拡張タイミングが遅すぎた場合の動脈波形

・ディクロティックノッチ後にバルーンが拡張している。
・鋭角的な「V」字波形なっておらず、ダイアストリックオーグメンテーションは自己の収縮期血圧と同等である。
・その場合、冠動脈の血流量は減少する。
・アシストされた拡張末期血圧が、自己の末期拡張期血圧と同等になる。
・その場合、心臓の後負荷軽減効果は減少する。
・アシストされた拡張末期血圧が、自己の末期拡張期血圧と同等またはそれよりも高くなる。
・その場合、心臓の後負荷は増加する。

トリガについて

・IABP装置のバルーンの収縮と拡張のトリガには、心電図と動脈圧波形が用いられる。
・通常タイミングは前項(2-2)の通り、動脈圧波形にて効果が最大限発揮されるタイミングに設定する。
・タイミング設定後のトリガについては、可能な限り心電図に同期させる。
動脈圧波形にて適切なタイミングを設定した後、心電図トリガを使用しIABPを作動させる。

可能な限りトリガは、心電図に同期させる理由

動脈圧トリガは、心房細動などの持続性不整脈ときには注意が必要である。
心房細動ではR波が不整に早期に出ることがあり、心電図トリガでは、この早期R波を検出したとき、バルーンの拡張期と心臓の収縮期が重ならないように、バルーンを収縮する安全機構が作動する。
一方、動脈圧トリガでは、収縮期圧脈の立ち上がりを検出し、安全機構が作動する。
しかし、バルーン拡張時に早期不整脈が発生した場合、不整脈の収縮期圧が、バルーン拡張時のオーグメンテーション圧に隠れてしまうことで、安全機構が働かない危険性がある。即ちバルーンの拡張と心臓の収縮が重なる危険性がある。
よって動脈圧トリガは、適切な心電図信号が存在している状態で使用するトリガ源ではない。可能な限り心電図トリガを使用する。 電気メスなどのノイズで心電図が得られない場合に、動脈圧トリガを選択する。
心電図トリガは、心電図の誘導波形のR波の波高が低い場合やP波やT波の波高と近い場合、うまくR波を認識できないことがある。
そのような場合には、有効なR波が確認できる誘導に変更するか、適切な誘導がなければ心電図電極の貼付位置を変更する。 心電図トリガは、機種により違いあるが、数種類のモードがある。心電図のR波を認識するモードや心房細動や期外収縮等によりR-Rが不整な場合に用いる不整脈モード、ペースメーカーのペーシングパルスの認識に適したペーシングモードなどがあり、適切に同期できる心電図トリガーを選択することが重要である。

バルーンサイズの選択

患者の身長に合わせてバルーンサイズを選択する。
バルーン長が大動脈遠位弓部から腹腔動脈上におさまるサイズを選択する。
身長155cm以下:30cc
身長155〜165cm:35cc
身長165cm以上:40cc

バルーン留置位置


• X線透視下または、経食道エコーガイド下にてバルーン先端が左鎖骨下動脈から約2cm下の胸部下行大動脈内に留置する。

バルーン留置位置

バルーンの管理


カテーテル挿入部位や接続ラインの事項を確認する

・屈曲やねじれがないか、接続部のゆるみや外れはないかを確認する。
・カテーテルの挿入部に異常はないかを確認する。
X線写真による位置の確認、感染兆候の有無
・カテーテルチューブ内に異常はないかを確認する。
・バルーンの拡張・収縮に異常はないかを確認する。

バルーンカテーテルの構造


ダブルルーメン構造になっている。

IABP 駆動装置

GETINGE : CARDIOSAVE IABP Hybrid
MERA : Corart BP3
Teleflex : AC3 Optimus

GETINGE(MAQUET)

CARDIOSAVE IABP Hybrid
CS300
MERA Corart BP3

駆動方式

Teleflex : AC3 Optimus

バルーンカテーテル
製造    製品名
MERA  コラートBPセンサーバルーンP2
Teleflex  UltraFlex 7.5Fr
ゼオン  ゼメックスIABP バルーンプラス
TMP  TOKAI 8Fr
GETINGE TRANS-RAY PLUS
https://www.getinge.com/jp/product-catalog/TRANS-RAY_PLUS/

TRANS-RAY PLUS

日本人専用設計の光ファイバーIABカテーテル

各種バルーンカテーテルについて


近年、カテ先に光ファイバー圧センサーを組み込むことで従来の水封式圧トランスデューサより
遅れの少ない正確なdicrotic notch(重複切痕)の認識が可能なバルーンカテーテルが開発され、
より至適なタイミングの調整が可能となってきている。
RANS-RAY(マッケ社製)やLigthWAVEの光ファイバーセンサー付きバルーン(テレフレックス
社製)などがある。

光ファイバー圧センサー付バルーンカテーテル
光ファイバー技術を用いた圧センサーによって動脈圧を測定可能にし、従来品より低侵襲な7FrのIABカテーテルである。
性能はそのままに、より多くの患者がIABP治療を受けることが可能となった。

駆動装置の原理

コンプレッサー方式←主流
ベローズ方式

コンプレッサー方式について

コンプレッサーで陽圧と陰圧を発生し、この圧力を利用してダイアフラムを介しバルーン側へ送る。
バルーン側にはヘリウムガスが満たされており、このヘリウムガスを移動させることでバルーンを拡張・収縮させる。この方式は、電磁弁の切替動作のみで行えるため応答速度が速いのが特徴である。

ベローズ方式について


• ステッピングモーターを使ってベローズ(蛇腹)を伸縮させて回路内のヘリウムガスを移動させ、バルーンを拡張・収縮させる方法である。
• この方式は、構造が単純で構成部品も尐ないため故障しにくいのが特徴である。

駆動装置モニターの表示項目の例

駆動装置の操作パネル(CS300)

保管時の管理について


・常にコンセントに差し込む。
・ヘリウムの残圧を確認する。
・定められた定期点検を行う。
・定期交換部品は、期限を超えて使用しない。
・心電図患者ケーブルなどの付属品の確認する。
・バッテリーの動作確認を行う。

適応(参考例)


心原性ショック
難治性心室不全
難治性不安定狭心症
切迫心筋梗塞
AMIによる機械的合併症 心室中隔穿孔、僧帽弁閉鎖不全、乳頭筋断裂
難治性心室性不整脈に起因する虚血
ハイリスクな一般手術における心補助
冠動脈血管造影/血管形成術における心補助
敗血性ショック
心肺バイパスからの離脱時の補助
体外循環中の拍動流の発生 etc…

血行動態的指標 (参考値)
BP80mmHg以下
CI 2.0L/min/m2以下、PAWP20mmHg 以上
尿量低下(0.5ml/kg/hr以下
末梢循環不全(四肢冷感、チアノーゼ)
注:上記指標は参考値であり、絶対的なものではありません。適用症例や施設のプロトコル
(管理基準)によって異なります。

絶対的禁忌

1:重症大動脈弁閉鎖不全症
大動脈弁逆流を増大させるため
2:胸部大動脈瘤、大動脈解離
機械的ストレスにより動脈瘤の破裂や損傷、解離の進展を引き起こすため

相対的禁忌(使用に際し慎重な検討が必要)

3:腹部、胸部大動脈の高度蛇行や屈曲
バルーンの拡張不全や血管損傷のリスクがあるため
4:腸骨動脈から総大腿動脈における重度の閉塞性動脈硬化症
下肢の虚血のリスクがあるため
5:重度の凝固異常
穿刺部の出血、または血小板減尐などから出血傾向を助長することがあるため。

離脱 (参考例)

〈血行動態的指標〉
• 収縮期圧>90mmHg
• PAWP(ウェッジ圧)<20mmHg
• CI(心係数)>2.2L/分/m2
〈臨床的指標〉
• 不整脈の消失
• 心不全の解消
• 尿量30ml/h以上
血行動態をみながら、補助比率を1心周期に対し1回から2心周期に1回と比率を下げたり、バルーンのガス容量を下げて、機械からの離脱を行う。

補助比率を下げる方法

バルーンのガス容量を下げる方法

Forrester分類


スワンガンツ(Swan-Ganz)カテーテルで得られる心係数(CI)と肺動脈楔入圧(PCWP)の2つの値を元に急性心不全の重症度を分類し、治療方針の決定や予後の予測に用いられる。

合併症

下肢の虚血


IABPの挿入後、挿入部より末梢下肢の血行障害が起こることがある。IAB挿入後に血行障害が生じると、下肢動脈の脈拍触知低下、冷感、しびれ、下肢両側の左右差などが観察される。下肢の血行障害が出現した場合、早期抜去を目指すか、他部位からの挿入の検討が必要になる。

動脈損傷


カテーテル挿入時にシースやガイドワイヤなどで動脈を損傷する可能性がある。


大動脈分枝の血行障害


大動脈内の血栓が遊離して塞栓症を起こす場合と、IABPのバルーンが分枝を閉塞して血行障害をきたす場合がある。バルーンが機械的に分枝を閉塞する場合、バルーン先端の弓部分枝の閉塞とバルーンの側壁が腹部分枝を閉塞する場合が考えられ、適切な部位への留置をすることが重要。またバルーンのサイズを把握しておくことも重要になる。

感染


経皮的にカテーテルを留置するため、感染のリスクがある。免疫機能の低下や挿入時の操作により感染を合併する場合があり。カテーテル挿入部周囲の観察と保護が重要になる

バルーンの損傷・破裂


石灰化部位との接触による消耗、バルーンの折れ曲がりによる材質疲労、バルーン挿入時の損傷などが原因で、バルーン内に血液を吸引、または血液中にヘリウムガスが混入する。
バルーン内圧の異常やカテーテル内への血液混入で診断されることが多く、血液の混入が認められた場合は速やかにカテーテルの抜去し再挿入が必要になる。

出血、貧血、抗凝固に関する問題


IABP施行中に血小板や赤血球が減尐する。また抗凝固療法を行う場合に出血を生じやすい状態にあり、出血の持続は貧血や感染の原因になる。IABカテーテル挿入部の出血の有無、血液凝固能の観察が重要になる。
ACTはどのくらいで管理すれば良いでしょうか?
・メーカー推奨値はありません。
・正常値は100~130秒ぐらいですが、IABカテーテル挿入中は血栓予防のために150秒前後にコントロールしている施設が多いようです。
・文献的には、150秒~180秒の記載が多いですが、施設のマニュアルに沿ってください。
・開胸術後の場合等、抗凝固療法は行わないケースもあります。

生体情報信号の入力方法

IABP施行中は、心電図や動脈圧波形、バルーン波形をモニタリングすることは必須である。
また、それら生体情報信号をIABPのバルーン収縮や拡張タイミングのトリガに使用したり、効果判定に用いるため、高品質で安定した生体情報信号を確保しモニタリングすることが重要となる。

生体から直接的に入力する方法とモニターなどの外部装置から間接的に入力する方法がある
・正確なタイミングでIABP療法を行う為には、可能な限り生体から直接信号を取り込んで下さい。
・間接入力だとモニターの信号処理時間の関係で、ディレイ(遅れ)があるため、IABPのタイミングがずれる恐れがある。

心電図モニタトリガミスの原因となる要因

 低品質な心電図
電極外れや電極の位置、心電図誘導の問題、患者の体動、医療機器による交流障害など
 不整脈
拡張・収縮のタイミングが近くなることにより、バルーンの動きが悪くなる。
 ペースメーカー使用時
ペーシングと自発心電図が混在しタイミングが乱れる。
 外部モニタによる影響
周波数帯域の狭い外部モニタ等を経由してIABPに信号を取り込むと、伝達速度の遅れからタイミングがずれることがある。

心電図モニタトリガミスの原因の対策

 低品質な心電図
心電図電極および皮膚表面の乾燥に注意する。電極位置の張替えや誘導の変更を行う。
 不整脈
可能な限り抗不整脈剤の投与などにより発生を抑える、効果が減少しても心負荷にならないようにタイミングを調整する。
 ペースメーカー使用時
発生する割合の多いほうにバルーン拡張のタイミングを合わせる。このときに、心収縮期にバルーンの拡張が入り込まないようにする。機種によりペーシングモード等使用する。
 外部モニタによる影響
直接生体信号をIABP本体に入力する。

動脈圧モニタトリガーミスの原因

・バルーン先端圧以外(橈骨動脈圧など)や他のモニタからバルーン先端圧を入力した場合、タイミングの遅れが生じることがある。
・非観血式血圧計による圧と比較し、あまりにその脈圧差に違いがある場合や右図のような圧が見られる場合、圧の鈍りの可能性がある。動脈圧波形に鈍りがあるとIABP至適タイミングの設定や確認が困難となる。

動脈圧モニタトリガーミスの原因の対策

・バルーン先端圧を直接本体装置に取り込む。
・圧鈍りが生じた場合、圧ラインのへパリン加生食のフラッシュや圧モニタリングチューブのラインを最短にすること、低コンプライアンスのチューブを使用することなどを確認する。

バルーン内圧波形

①オーバーシュート バルーンが膨張直後(ヘリウムガスの応答性が良いことを示す。)
②アンダーシュート バルーンが収縮直後(ヘリウムガスの応答性が良いことを示す。)
③プラトー バルーンが膨張し内圧が安定した状態
④ベースライン バルーンが収縮し内圧が安定した状態(正常波形を理解する。)
この正常波形パターンを覚えることが重要
CS300の場合、この変化率が1時間当たり5ccに相当すると「IAB回路の漏れ」で、同じく1拍あたり2.5ccだと「急速なガス漏れ」のアラームが発生する

異常波形:カテーテル・延長チューブのキンク・折れ曲波形
カテーテル・延長チューブのキンク・折れ曲がりのためヘリウムラインの流れが阻害されたことより、オーバシュートやアンダーシュート部分の波形がなまっている。
ヘリウムラインやカテーテルのキンクや折れ曲がり確認
異常波形:バルーンのオーバーボリューム波形

正常波形と比較して全体的に方形波になっている点では前項のヘリウムラインのキンクと似ている。
違いはオーバシュートとアンダーシュートの波形の戻りは早いが、正常波形と比較して小さい。
プラトー圧がかなり高くなっている。
対処方法としては、オーグメンテーションボリュームを下げて患者さんの適正ボリュームに再設定してください。

ガス漏れ検出アラーム


1)アラームの意味
・バルーン回路からヘリウムガスの漏れを検出してIABP 本体の作動を停止する。
2)チェックポイント
・チューブ接続部分をしっかりと取り付ける。
・挿入直後のチューブ内に血液が見られないかを確認する。
・モニタスクリーン上のガス駆動圧波形が適切かを確認する。
3)対処方法
・患者の状態を確認する。
・すべての接続部に漏れがないかを確認する。
・チューブ内に血液が見られたらすぐに抜去する必要があるため、直ちにポンプ
をオフにして医師に連絡する。
・対処後、不具合がなければポンピングを再開する。
4)注意点
・定期的にバルールカテーテルのチューブ内の状態を確認する。
・モニタスクリーン上の駆動圧波形を経過観察する。
・バルーンカテーテルが折れている場合にも、このアラームが発生する機種もある。
ヘリウムライン内に血液の付着がないかを確認する。血液がなければ、ヘリウムランの接続部やライン閉塞がないことを確認してポンピングを再開する。
血液が確認されればポンピングを停止し、直ちにバルーンを抜去する。

ガス漏れ検出アラーム

バルーンに破損がない場合、延長チューブ・装置の接続部が緩んでいる場合には、そこからガスが漏れてアラームが発生する事があるので確認を行う。
異常なければ、接続部を再確認し、再スタートをする。
バルーン内圧波形を確認する

異常なバルーン内圧波形:リーク波形
実際にバルーンの破損が無くても装置がアラームを発生させる
事がある。
キンクなどでヘリウムガスの流れが阻害され、バルーン内圧のベースラインが正常に認識できないため、機械はガス漏れと判断してアラームを発生させる。

高圧アラーム

1)アラームの意味
・バルーンが拡がらないか、またはカテーテルが折れていることを示す。
2)チェックポイント
・バルーンの位置をX線写真または透視下にて確認する。
・モニタスクリーン上の駆動圧波形を確認する。
3)対処方法
・患者の状態を確認する。
・IABP 本体までのバルールカテーテルのチューブの状態を確認する。
・挿入部位の患者の下肢が曲がっていないかを確認する。
・バルーンの位置をX線写真などで確認する。
・オン/オフを繰り返してバルーンを拡げる。
・緊急の場合はシリンジを使用してバルーンを拡げる。
4)注意点
・定期的にバルールカテーテルのチューブの状態を確認する。
・モニタスクリーン上のバルーン内圧波形を経過観察する。

バルーン内圧波形を確認する
カテーテル・延長チューブのキンク・折れ曲がりのためヘリウムラインの流れが阻害されたことより、オーバシュートやアンダーシュート部分の波形がなまっている。
IABP 本体までのバルールカテーテルのチューブの状態を確認する。

トリガ不良アラーム

1)アラームの意味
・ポンピングのトリガに利用する生体信号が適正な状態で入力されていない。
2)チェックポイント
・心電図信号を装置本体に入力する。
・心電図電極を貼る時には、皮膚表面をアルコール綿などで前処理する。
・心電図は大きなR 波となる誘導を選択する。
3)対処方法
・患者が覚醒している場合は体動に注意する。
・安定した誘導の心電図を使用する。
・電極が剥がれていないか確認し、確実に固定する。
・波形のゲイン調整が適切かを確認する。
・電気メスを使用している場合は、血圧トリガモードにする。
4)注意点
・一定時間ごとに、収縮と拡張のタイミングを監視し調整する。

ヘリウムボンベアラーム

1)アラームの意味
・ボンベ内のヘリウムガス量が残り尐ない。 2)チェックポイント
・使用前にボンベの充填容量を確認する。 3)対処方法
・ヘリウムボンベのバルブが閉じていないかを確認する。 4)注意点
・予備のボンベを用意しておく。
・ボンベ交換の練習を定期的に行う。
ヘリウムガス残量の警告アラームが表示された場合速やかにボンベを交換する。

バッテリ電圧低下アラーム

・駆動電源はAC電源かバッテリーかを確認。速やかにAC電源を確保する。
・機種により異なるが、満充電時に約60分~120分程バッテリーで駆動する。

1)アラームの意味
・内蔵バッテリの電圧が低下し、駆動時間がわずかであることを知らせる。 2)チェックポイント
・保管場所では必ず本体の電源プラグをコンセントに差し込み、内蔵バッテ
リを充電状態にしておく。
・IABP を装着した患者の移動が終了した時には、必ず近くの電源コンセント
に電源プラグを差し込む。 3)対処方法
・移動中に内蔵バッテリが切れたら、バルーンに血液凝固が生じる可能性が
あるので30分以内に電源プラグを電源コンセントに差し込んで作動させる。
・主電源スイッチが背面にある場合、うっかり触れて切られないような保護手
段を施す必要がある。 4)注意点
・移動のため電源プラグを電源コンセントを抜いたら、内蔵バッテリで駆動し
ていることをランプなどで確認する。

電源異常アラーム

1)アラームの意味
・交流電源から内蔵バッテリ駆動になったことを知らせる。
2)チェックポイント
・電源プラグを意識的に抜いたのか、誤って抜けたのかを確認する。
・電源プラグが抜けていないのにこのアラームが発生したら、停電の発生か電
源コードの断線が考えられる。
3)対処方法
・電源プラグを意識的に抜いた場合はアラーム音を消すだけでよい。
・電源プラグが誤って抜けた場合はすぐ電源にコンセントに差し込む。
4)注意点
・交流電源で使用しているときは、本体の電源コードプラグが電源コンセントから
容易に抜けることがないようにテープなどを使用して固定するとよい。

オーグメンテーション圧アラーム

1)アラームの意味
・動脈圧波形でバルーン拡張時の拡張期圧の上昇が警報設定より低い。
2)チェックポイント
・ヘリウム充填容量設定を確認する
・バルーンの位置を確認する。
・バルーンがラプチャーを起こしてないか確認する。
・患者の血圧変化を確認する。
・カテーテルとヘリウムラインに屈曲がないことを確認する。
3)対処方法
・ヘリウム充填容量設定を増加する。
・レントゲン等でバルーンの位置を確認し、適切な位置へバルーンを修正する。
・バルーンがラプチャーしている場合は、すぐにバルーンカテーテルを抜去する。
ヘリウム充填容量は、最大設定でバルーンが最大に
膨らむように設計されている。
• 各施設や患者の管理状況によって設定を任意に変更し対応する。


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参考


http://www.jseptic.com/ce_material/update/ce_material_11.pdf
IABP療法について - MERA 泉工医科工業株式会社 ―医療と共に歩む、信頼のメラ製品―
目次1 IABPとは2 IABPによって得られる効果3 まとめ4 IABP駆動装置の製品情報5 バルーンカテーテルの製品情報 IABPとは 心臓は全身に血液を送 … 続きを見る
https://www.mera.co.jp/wp-content/uploads/2020/04/d118.pdf https://www.kango-roo.com/learning/7357/
https://www.shizurinko.com/handbook2000/90000.pdf GETINGE(MAQUET)
https://www.getinge.com/jp/products/hospital/counterpulsation/
Teleflex : AC3 Optimus
https://www.teleflex.com/japan/jp/product-areas/interventional/cardiac-assist/ac3-optimus-iabp/index.html

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