CDI(体外循環用血液ガスモニタ)とは|測定項目・シャントセンサー・pH-statとα-statを解説

心臓血管外科
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CDIは、体外循環中の血液ガスを連続的にモニタする装置です。回路にセンサーを組み込み、pHやpO2、静脈血酸素飽和度などをリアルタイムで表示します。人工肺の吹送ガスをどう調整するか、灌流量が足りているかを判断するための「目」にあたる機器です。
CDI 550システムのモニタ本体
CDI 550システム

なぜ「連続」でないと困るのか

体外循環中の血液ガスは、本来は回路から採血して血液ガス分析装置にかけて測ります。しかしこの方法では測った瞬間の値しか分かりません。採血と採血の間に何が起きていたかは見えません。 日本心臓血管外科学会の解説では、体外循環中は「血液ガスを見ながら人工肺への吹送ガスを調整する」とされています。調整の根拠が血液ガスである以上、その値が連続で見えるかどうかは 管理の質を大きく変えます。CDIはこの穴を埋める装置です。

動脈側と静脈側で測るものが違う

CDIの構成で最初に押さえるべきは、センサーが2種類あり、測る場所と項目が違うことです。
CDIシステムの構成。キャリブレーター、シャントセンサー、H/Sキューベット、モニター
システム構成:キャリブレーター/シャントセンサー/H/Sキューベット/モニター
センサー測る場所測定項目
シャントセンサー動脈側(送血側)pH/pCO2/pO2/K+
H/Sキューベット静脈側(脱血側)SO2/Hct/Hgb
これらの実測値に加えて、BE・HCO3−・温度・DO2・VO2などが算出値として表示されます。
シャントセンサー。回路の動脈側に組み込みpH・pCO2・pO2・K+を測定する
シャントセンサー(動脈側)— pH・pCO2・pO2・K+ を測定
H/Sキューベット。静脈側でSO2・Hct・Hgbを測定する
H/Sキューベット(静脈側)— SO2・Hct・Hgb を測定

測定値をどう使うか

項目何の判断に使うか
pO2人工肺の酸素濃度(FiO2)調整。自治医科大学附属さいたま医療センターの体外循環マニュアルでは「PO2:200〜300:低い場合には酸素濃度を上げる」を目安としている
pCO2人工肺へのガス流量の調整
SO2(静脈側)酸素需給バランス。日本心臓血管外科学会は混合静脈血酸素飽和度について「60%以上が離脱の条件となる」としている
K+心筋保護液の投与で上昇する。高カリウムは心停止・不整脈に直結する
Hct・Hgb希釈の程度。酸素運搬能の分母になる
SO2が下がってきたら「送っている酸素より組織が使っている酸素が多い」ということなので、灌流量を上げるか、Hctを上げるか、酸素濃度を上げるかという判断につながります。連続で見えることの価値がいちばん出る項目です。

pH-stat と α-stat ——低体温だと血液ガスの「正解」が2つある

CDIには「実際の温度で表示する(pH-stat)」「37℃換算で表示する(α-stat)」の切り替えがあります。なぜそんな設定が必要なのか——ここが体外循環でいちばん理屈っぽく、かつ国家試験にも出るところです。

低体温では血液のpHが勝手に上がる

血液を冷やすと、CO2の溶解度が変わるためpHが変化します。日本小児循環器学会の解説にはこう書かれています。

小児体外循環におけるpH strategy(日本小児循環器学会雑誌)
つまり、患者が28℃まで冷えているとき、血液ガス分析装置が37℃で測って「pH 7.40」と出しても、患者の体内では実際にはもっとアルカリ側に振れているわけです。同解説では「生体内のpH = 計測したpH + 0.0147 × (37 − 体温)と補正する必要がある」とされています。

2つの流儀

α-stat(アルファスタット)pH-stat(ピーエイチスタット)
考え方温度補正しない。37℃で測ってpH 7.4になるよう管理する温度補正する。実際の体温でpH 7.4・PCO2 40mmHgになるよう管理する
CO2の添加しないする(実温でのPCO2を保つため)
体内の実際のpHアルカリ側に振れる7.4に保たれる
脳血流自動調節が保たれやすいCO2が高いぶん脳血管が拡張し脳血流が増える
もうひとつ、低体温そのものの影響も効いてきます。「低体温はヘモグロビン酸素解離曲線を左にシフトしヘモグロビンが酸素を組織に放ちにくくなる(Bohr効果)」——冷やすほど酸素は渡しにくくなります。pH-statではCO2を足すぶん曲線が右に戻る方向に働きます。

どちらを使うか

同解説では、循環停止を併用する低体温体外循環について「脳動脈硬化のない小児においてはpH-statの術後の脳障害が少ないとの臨床的および実験的報告がボストン小児病院から多数出されている」と記載されています。 一方で成人では、脳血流が増えることが必ずしも有利とは限らない(塞栓子も一緒に流れうる)という議論があり、施設によって方針が異なります。自施設のプロトコルがどちらなのかを必ず確認してください。CDIの表示設定を取り違えると、同じ血液で違う数値を見ていることになります。

DO2(酸素運搬量)の表示

近年の機種ではDO2(酸素運搬量、O2 Delivery)が表示されます。Hgb・SO2・ポンプ流量・pO2から算出される値で、「どれだけ酸素を送れているか」を1つの数字にまとめたものです。 体外循環中のDO2を目標値として管理する考え方(目標指向型体外循環管理/Goal Directed Perfusion)が議論されており、DO2の低下と術後急性腎障害との関連が検討されています。ただし目標値として何を採るかは確立されておらず、本記事では原典で確認できた範囲を超える数値は記載しません。

現行の機種について

本記事で図示しているのはCDI 550システムですが、テルモは2026年2月に後継となる「CDI OneView モニタリングシステム」の発売を発表しています。実際に導入・運用する際は、自施設の機種の添付文書と取扱説明書を確認してください。
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参考(一次情報)

本記事は2026年8月に、学会資料に基づいて全面的に書き直しました。

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