遠心ポンプとは|原理・ローラポンプとの違い・逆流と流量計をわかりやすく解説

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遠心ポンプは、羽根車(インペラ)の回転で血液を送り出す血液ポンプです。人工心肺やPCPS・ECMOで、人工肺へ血液を送る役割を担います。血液を「しごかない」ため血球へのダメージが少ない一方、弁がないので逆流するという決定的な弱点があり、そこを理解しているかどうかで安全性が変わります。

原理:羽根車の遠心力で送る

泉工医科工業の解説では、遠心ポンプの原理は「羽根車を回転したときに生じる遠心力によって、液体が外側へ押しやられることにより、液体を送液することができます」と説明されています。 中心から入った血液が、回転する羽根車で外周へ振り飛ばされ、その勢いで送血口から押し出される——という仕組みです。血液に触れるのは回転するインペラと容器の内壁だけで、チューブをしごく機構がありません。これが後述する利点と欠点の両方を生みます。
遠心ポンプの断面図。羽根車(インペラ)と血液の流れ
遠心ポンプの断面。中心から入った血液が羽根車の回転で外周へ押し出される
対するローラポンプは「弾力性のあるチューブをしごくことで、液体を吸入したり、吐出したりできます」(同)という、まったく別の原理です。

ローラポンプとの違い

日本心臓血管外科学会・日本胸部外科学会・日本人工臓器学会の3学会が作成した「人工心肺装置の標準的接続方法およびそれに応じた安全教育等に関するガイドライン」に、両者の特性が整理されています。以下は同ガイドラインの記載です。
ローラポンプ遠心ポンプ
原理チューブをしごく羽根車の遠心力
流量と回転数「回転数と流量が比例するため、回転数から誤差の少ない流量精度(5%以下)が得られる」「回転数が一定でも、前負荷・後負荷の変動で流量変化を生じる」
流量計不要(回転数で管理できる)必須
血球への影響「ローラーでチューブをしごくために血液損傷(挫滅)が発生する」「血液をしごかないため血球損傷が少ない」
回路が閉塞したら「高圧のため接続部が外れたり、人工肺が壊れることがある」「過度の陽圧を生じず、人工肺および回路の損傷がない」
逆流起きない「弁機構がないため、血液の逆流を生じる」
低流量時調整しやすい「低流量時の調整が難しい」
ざっくり言えば、ローラポンプは「流量が正確だが血液に厳しい」、遠心ポンプは「血液に優しいが流量が不確か」という関係です。

遠心ポンプの利点

同ガイドラインが挙げる利点は3つです。
  • 「血液をしごかないため血球損傷が少なく、充填液が少なくて済む
  • 「回路を狭窄および閉鎖した場合でも過度の陽圧を生じず、人工肺および回路の損傷がない」
  • 脱血に過度の陰圧を生じないため、小気泡の発生が少ない」
2つめが特に大きく、送血回路が詰まってもポンプ側が空回りするだけで圧が上がりきらないため、回路の破裂や人工肺の破損に至りにくい。ローラポンプでは「送血回路には圧力モニターおよび圧連動ポンプ停止機構が必須」とされているのと対照的です。

弱点と、その対策

① 回転数を上げても流量が出るとは限らない → 流量計が必須

遠心ポンプは後負荷(送血側の抵抗)に依存します。血圧が上がったり回路が絞られたりすると、回転数はそのままでも流量が落ちます。だからガイドラインはこう定めています。
回転数と流量が必ずしも比例しないため、電磁または超音波を利用した流量計で血液流量を測定することが必須となる 人工心肺装置の標準的接続方法およびそれに応じた安全教育等に関するガイドライン
体外循環中は「流量計で流量を連続監視する」こととされています。回転数は流量ではありません。ここを取り違えると、流量が落ちているのに気づけません。

② 弁がないので逆流する → ポンプを止めたら送血ラインも遮断

これが遠心ポンプで最も重要な安全上のポイントです。羽根車が回っているから前に進んでいるだけで、止まれば血液は圧の高い方から低い方へ逆流します。患者の動脈側から回路へ血液が引き戻される、ということです。
逆流防止のために、一方弁を組み込むことや、ポンプ停止時は必ず脱血ラインの他に送血ラインも鉗子などで遮断する 同ガイドライン
「ポンプを止めるときは、脱血ラインだけでなく送血ラインもクランプする」——これを体で覚えておく必要があります。

③ 出口を遮断したまま高速回転させない

同ガイドラインには「遠心ポンプの出口を遮断したままポンプを長時間高速回転させない」という注意が明記されています。血液が流れないまま羽根車が回り続けると、同じ血液がかき回され続けて熱と血球破壊を生みます。

トラブル時の備え(JaSECT安全ハンドブック)

日本体外循環技術医学会の「人工心肺安全ハンドブック」には、ポンプのトラブルが項目立てされています。
項目内容予防策(原文)
B-4遠心ポンプの停止「ハンドクランクの準備と操作の体得」/「送血回路への逆流を防止するクランパー(遮断機)の利用や逆流防止弁の組み込み」
B-6遠心ポンプの故障「予備のポンプの準備」
B-3ローラーポンプの停止「内部バッテリの適切な充電と定期的な交換」「予備電源の準備」「ハンドクランクの準備と手動操作による送血の体得」
B-5ローラーポンプの故障「予備のポンプの準備」「適切な圧閉度調節」
遠心ポンプが止まったときの対処は「ハンドクランクを用いて手動操作を行いながら、予備ポンプへの交換」。ハンドクランクは置いてあるだけでは意味がなく、回せることが備えです。

どこで使われるか

開心術の人工心肺の送血ポンプとして、またPCPS・ECMOの血液ポンプとして使われます。長時間の補助循環では血球損傷の少なさが効くため、PCPS/ECMOでは遠心ポンプが標準です。 なお人工心肺でも、心筋保護液や酸素加血を冠動脈に流す冠灌流回路にはローラーポンプが使われます(日本心臓血管外科学会)。適材適所で使い分けられています。
メラ遠心ポンプ HCF-MP23H の外観
メラ遠心ポンプ HCF-MP23H
回路の抗血栓性については、施設によってヘパリンコーティング処理を施した遠心ポンプが用いられます。
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参考(一次情報)

本記事は2026年8月に、3学会合同ガイドラインと学会資料に基づいて全面的に書き直しました。
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