心臓補助循環装置のIABPについて解説

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IABP(Intra Aortic Ballon Pumping)について解説します。

IABP(Intra Aortic Ballon Pumping)大動脈内バルーンポンピング

IABPとは

IABP は Intra Aortic Ballon Pumping の略
大動脈内バルーンポンピングという。

心臓のポンプ機能が低下してる患者をサポートするための補助循環療法

大動脈内にバルーンカテーテルを挿入し、
心臓の拍動に同期して

インフレート(拡張)
デフレート(収縮)

させる。

下行大動脈内に挿入したバルーンカテーテルを心臓の拍動に合わせて拡張・収縮させることで心臓の補助を行う補助循環装置 

重症心不全や心原性ショックに適応

IABPの目的

心筋への酸素供給を増加させ、心筋の酸素消費量(需要)を減少させる
心拡張期:パルーン膨張  → 拡張期圧の上昇
心収縮期:パルーン収縮  → 収縮期圧の減少

IABPの原理

下行大動脈内にバルーンを留置する。

心電図や大動脈圧波形に同期させヘリウムガスで心臓の拡張期(diastole)にバルーンを膨張(inflation)させる。

これにより心蔵の拡張期圧が上昇し、冠動脈血流が増加する。

また、心臓の収縮期 (systole)にはバルーンを収縮 (deflation)させる。

これにより心室の後負荷を軽減する。
また、心筋酸素消費量を減少させる。

ヘリウムガスがバルーンの駆動に用いられている理由

ヘリウムガスは気体の中で、水素ガスに次いで軽い気体(分子量:4)あり、ガス移動時の抵抗が少ない応答性がよい。(水素ガスは、爆発の危険性があるため採用されていない)
IABPは、心臓の拡張期に拡張、収縮期に収縮させることよって効果を得る療法なので、応答性が良いヘリウムガスが用いられる。
しかし、ヘリウムガスは血液に非常に溶けにくいためバルーンの破裂には注意する必要がある。

IABPによる効果

• ダイアストリック・オーグメンテーション:拡張期圧増強(diastolic augmentation)
心拡張期にバルーンが膨張することにより、拡張期圧の上昇による冠動脈血流量の増加を図り、虚血に陥った心筋への酸素供給が増加する。

• シストリック・アンローディング:収縮減負荷期(systolic unloading)
心収縮期にバルーンが収縮することにより、駆出量増加、後負荷の軽減により心筋酸素消費量が減尐する。

ダイアストリック・オーグメンテーションdiastolic augmentation拡張期圧増強の効果

    バルーンの拡張により

疑似的にバルーンの容量分だけ血液量が増えた状態となる
           ↓
        拡張期圧が上昇
           ↓
 バルーンの容量分だけ血液が押し出され他臓器へ流れ込む
           ↓
        冠血流量の増加
     (心筋酸素供給量の増加)
・冠動脈血流量の増加
・平均動脈圧の上昇

シストリック・アンローディングsystolic unloading収縮減負荷期の効果

           バルーンの収縮により

 疑似的にバルーンの容量分だけ血液量が減少した状態となる
                  ↓
              拡張末期圧が低下
                  ↓
 しぼんだバルーンの容量だけ少ない力で血液が駆出できる
            左室後負荷の軽減
         (心筋酸素消費量の減少)

・アフターロードの軽減
・心仕事量の軽減
・心筋酸素消費量(MVO2)低下

IABPの効果まとめ

・冠動脈血流量の増加
・平均動脈圧の上昇
・後負荷の軽減
・心仕事量の軽減
・心筋酸素消費量の減少

IABPの適応

心原性ショック
左心室不全
急性心筋梗塞によるポンプ失調
PTCAとの併用
血栓溶解療法との併用
内科的治療に反応しない不安定狭心症
低心拍出量症候群
人工心肺からの離脱が困難な症例
ハイリスクな全身麻酔患者の安定化
心肺蘇生中
stunned myaoardium
心移植までのブリッジ使用など 血行動態的指標
収縮気圧<90mmHg
PAWP(ウェッジ圧)>20mmHg
CI(心係数)<2.2L/min/m^2

IABPの管理

挿入部の管理 血管内にIABカテーテルを留置しているため感染のリスクが高くなる。挿入部と全身の感染兆候の感染に努める。 観察項目
挿入部:発赤、腫脹、疼痛、熱感、浸出液の有無
全身性:発熱、白血球、CRPなどの炎症反応の有無 バルーンリークの早期発見 カテーテルの疲労性劣化や血管内石灰化部位との接触によりバルーンが傷つき、カスリークやバルーン内部に血液を吸引し凝血する可能性がある。バルーン内部の凝血(バルーントラップメント)により、カテーテルを外科的に抜去しなければならないこともある。 観察項目
ポンプのリークアラームの作動確認
体外チューブの点検
拡張期オグメンテーション波形の変化(低下傾向)
バルーン内圧波形の変化(ペースラインの低下) 抗凝固療法と出血傾向管理
IABP療法中にヘパリンを用いた抗凝固療法を行う場合、IABカテーテル挿入部や消化管などからの出血に注意する。 観察項目
挿入部の出血、皮下出血、出血班、消化管出血、血尿、鼻出血、歯肉出血などの有無
血液検査:ACT(活性凝固時間)、PT(プロトロンビン時間)、PLT(血小板数)Hb(ヘモグロビン値)

合併症

・バルーン挿入側下位の重篤な下肢虚血
・重篤な動脈壁の損傷・穿孔
・動脈解離・仮性動脈解離
・血塞栓
・感染
・重篤な出血・血腫
・バルーン破裂によるガス塞栓
・バルーンのビンホールによるバルーン内凝血塊形成
・血小板減少、溶血、脊髄乏血、内臓の乏血、ニューロパチーなど
バルーンサイズ
身長155cm以下:30cc
身長155〜165cm:35cc
身長165cm以上:40cc

バルーンのタイミング

下行大動脈内に留置されたバルーンが、駆動装置より供給されるヘリウムガスにより、心臓の拡張期(diastole)に膨張(inflation)させ、心臓の収縮期(systole)に収縮(deflation)させる。
このバルーンの拡張・収縮のタイミングは患者自身の心電図波形や動脈圧波形により決定される。
• バルーンの拡張は心臓の拡張初期(大動脈弁の閉鎖直後)に合わせる。
• バルーンの収縮は心臓の駆出直前(左心室の収縮の直後)に合わせる。
動脈圧波形では、大動脈弁の閉鎖時(心臓の拡張開始時)にdicrotic notch(重複切痕)ができる。
拡張タイミングは大動脈圧波形のdicroticnotchに合うように調整する。
収縮タイミングはバルーン作動時の拡張末期動脈圧が最低値を示すように調整する。
調整時はバルーン先端圧(大動脈圧波形)を用いてバルーンの駆動を一時的に1:2にして行うことで、波形上適正なタイミングの視認が可能である。
アシストなしの状態からアシスト1:2の状態で拡張・収縮をさせタイミングを合わせる。その後アシストを1:1に変更する
理想的なIABPの拡張・収縮タイミング時の動脈波形

バルーン拡張タイミングが早すぎた場合の動脈波形

ディクロティックノッチ前にバルーンが拡張している。
その場合、心臓の後負荷増大、大動脈弁早期閉鎖、逆流の可能性がある。

バルーン拡張タイミングが遅すぎた場合の動脈波形

・ディクロティックノッチ後にバルーンが拡張している。
・鋭角的な「V」字波形なっておらず、ダイアストリックオーグメンテーションは自己の収縮期血圧と同等である。
・その場合、冠動脈の血流量は減少する。
・アシストされた拡張末期血圧が、自己の末期拡張期血圧と同等になる。
・その場合、心臓の後負荷軽減効果は減少する。
・アシストされた拡張末期血圧が、自己の末期拡張期血圧と同等またはそれよりも高くなる。
・その場合、心臓の後負荷は増加する。

トリガについて

・IABP装置のバルーンの収縮と拡張のトリガには、心電図と動脈圧波形が用いられる。
・通常タイミングは前項(2-2)の通り、動脈圧波形にて効果が最大限発揮されるタイミングに設定する。
・タイミング設定後のトリガについては、可能な限り心電図に同期させる。
動脈圧波形にて適切なタイミングを設定した後、心電図トリガを使用しIABPを作動させる。

可能な限りトリガは、心電図に同期させる理由

動脈圧トリガは、心房細動などの持続性不整脈ときには注意が必要である。
心房細動ではR波が不整に早期に出ることがあり、心電図トリガでは、この早期R波を検出したとき、バルーンの拡張期と心臓の収縮期が重ならないように、バルーンを収縮する安全機構が作動する。
一方、動脈圧トリガでは、収縮期圧脈の立ち上がりを検出し、安全機構が作動する。
しかし、バルーン拡張時に早期不整脈が発生した場合、不整脈の収縮期圧が、バルーン拡張時のオーグメンテーション圧に隠れてしまうことで、安全機構が働かない危険性がある。即ちバルーンの拡張と心臓の収縮が重なる危険性がある。
よって動脈圧トリガは、適切な心電図信号が存在している状態で使用するトリガ源ではない。可能な限り心電図トリガを使用する。 電気メスなどのノイズで心電図が得られない場合に、動脈圧トリガを選択する。
心電図トリガは、心電図の誘導波形のR波の波高が低い場合やP波やT波の波高と近い場合、うまくR波を認識できないことがある。
そのような場合には、有効なR波が確認できる誘導に変更するか、適切な誘導がなければ心電図電極の貼付位置を変更する。 心電図トリガは、機種により違いあるが、数種類のモードがある。心電図のR波を認識するモードや心房細動や期外収縮等によりR-Rが不整な場合に用いる不整脈モード、ペースメーカーのペーシングパルスの認識に適したペーシングモードなどがあり、適切に同期できる心電図トリガーを選択することが重要である。

IABP 駆動装置

GETINGE : CARDIOSAVE IABP Hybrid
MERA : Corart BP3
Teleflex : AC3 Optimus

GETINGE(MAQUET)

CARDIOSAVE IABP Hybrid
CS300
MERA Corart BP3

駆動方式

Teleflex : AC3 Optimus

駆動装置の原理

コンプレッサー方式←主流
ベローズ方式
バルーンカテーテル
製造    製品名
MERA  コラートBPセンサーバルーンP2
Teleflex  UltraFlex 7.5Fr
ゼオン  ゼメックスIABP バルーンプラス
TMP  TOKAI 8Fr
GETINGE TRANS-RAY PLUS
https://www.getinge.com/jp/product-catalog/TRANS-RAY_PLUS/

TRANS-RAY PLUS

日本人専用設計の光ファイバーIABカテーテル


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PCIトップページ
MEトップページ

参考


http://www.jseptic.com/ce_material/update/ce_material_11.pdf
IABP療法について - MERA 泉工医科工業株式会社 ―医療と共に歩む、信頼のメラ製品―
目次1 IABPとは2 IABPによって得られる効果3 まとめ4 IABP駆動装置の製品情報5 バルーンカテーテルの製品情報 IABPとは 心臓は全身に血液を送 … 続きを見る
https://www.mera.co.jp/wp-content/uploads/2020/04/d118.pdf https://www.kango-roo.com/learning/7357/
https://www.shizurinko.com/handbook2000/90000.pdf GETINGE(MAQUET)
https://www.getinge.com/jp/products/hospital/counterpulsation/
Teleflex : AC3 Optimus
https://www.teleflex.com/japan/jp/product-areas/interventional/cardiac-assist/ac3-optimus-iabp/index.html

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