なぜ「連続」でないと困るのか
体外循環中の血液ガスは、本来は回路から採血して血液ガス分析装置にかけて測ります。しかしこの方法では測った瞬間の値しか分かりません。採血と採血の間に何が起きていたかは見えません。 日本心臓血管外科学会の解説では、体外循環中は「血液ガスを見ながら人工肺への吹送ガスを調整する」とされています。調整の根拠が血液ガスである以上、その値が連続で見えるかどうかは 管理の質を大きく変えます。CDIはこの穴を埋める装置です。動脈側と静脈側で測るものが違う
CDIの構成で最初に押さえるべきは、センサーが2種類あり、測る場所と項目が違うことです。
| センサー | 測る場所 | 測定項目 |
| シャントセンサー | 動脈側(送血側) | pH/pCO2/pO2/K+ |
| H/Sキューベット | 静脈側(脱血側) | SO2/Hct/Hgb |
測定値をどう使うか
| 項目 | 何の判断に使うか |
| pO2 | 人工肺の酸素濃度(FiO2)調整。自治医科大学附属さいたま医療センターの体外循環マニュアルでは「PO2:200〜300:低い場合には酸素濃度を上げる」を目安としている |
| pCO2 | 人工肺へのガス流量の調整 |
| SO2(静脈側) | 酸素需給バランス。日本心臓血管外科学会は混合静脈血酸素飽和度について「60%以上が離脱の条件となる」としている |
| K+ | 心筋保護液の投与で上昇する。高カリウムは心停止・不整脈に直結する |
| Hct・Hgb | 希釈の程度。酸素運搬能の分母になる |
pH-stat と α-stat ——低体温だと血液ガスの「正解」が2つある
CDIには「実際の温度で表示する(pH-stat)」「37℃換算で表示する(α-stat)」の切り替えがあります。なぜそんな設定が必要なのか——ここが体外循環でいちばん理屈っぽく、かつ国家試験にも出るところです。低体温では血液のpHが勝手に上がる
血液を冷やすと、CO2の溶解度が変わるためpHが変化します。日本小児循環器学会の解説にはこう書かれています。小児体外循環におけるpH strategy(日本小児循環器学会雑誌)つまり、患者が28℃まで冷えているとき、血液ガス分析装置が37℃で測って「pH 7.40」と出しても、患者の体内では実際にはもっとアルカリ側に振れているわけです。同解説では「生体内のpH = 計測したpH + 0.0147 × (37 − 体温)と補正する必要がある」とされています。
2つの流儀
| α-stat(アルファスタット) | pH-stat(ピーエイチスタット) | |
| 考え方 | 温度補正しない。37℃で測ってpH 7.4になるよう管理する | 温度補正する。実際の体温でpH 7.4・PCO2 40mmHgになるよう管理する |
| CO2の添加 | しない | する(実温でのPCO2を保つため) |
| 体内の実際のpH | アルカリ側に振れる | 7.4に保たれる |
| 脳血流 | 自動調節が保たれやすい | CO2が高いぶん脳血管が拡張し脳血流が増える |
どちらを使うか
同解説では、循環停止を併用する低体温体外循環について「脳動脈硬化のない小児においてはpH-statの術後の脳障害が少ないとの臨床的および実験的報告がボストン小児病院から多数出されている」と記載されています。 一方で成人では、脳血流が増えることが必ずしも有利とは限らない(塞栓子も一緒に流れうる)という議論があり、施設によって方針が異なります。自施設のプロトコルがどちらなのかを必ず確認してください。CDIの表示設定を取り違えると、同じ血液で違う数値を見ていることになります。DO2(酸素運搬量)の表示
近年の機種ではDO2(酸素運搬量、O2 Delivery)が表示されます。Hgb・SO2・ポンプ流量・pO2から算出される値で、「どれだけ酸素を送れているか」を1つの数字にまとめたものです。 体外循環中のDO2を目標値として管理する考え方(目標指向型体外循環管理/Goal Directed Perfusion)が議論されており、DO2の低下と術後急性腎障害との関連が検討されています。ただし目標値として何を採るかは確立されておらず、本記事では原典で確認できた範囲を超える数値は記載しません。現行の機種について
本記事で図示しているのはCDI 550システムですが、テルモは2026年2月に後継となる「CDI OneView モニタリングシステム」の発売を発表しています。実際に導入・運用する際は、自施設の機種の添付文書と取扱説明書を確認してください。———————————
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