食塩・水

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食塩・水

血液透析患者には高血圧の合併が多く,また CKD ステージ 5 であることを考えると,CKD 診療ガイド 201214),日本高血圧学会ガイドライン 200915)に示され る一日 6 g 未満の食塩摂取を推奨すべきであると考え られる.しかしながら血液透析患者の生理学的な特異 性を考えると,一律に一日 6 g 未満と設定することが 本当に適切か否かを議論する必要がある.実際 1997 年 に日本腎臓学会が提唱した腎疾患患者の食事療法手引 きでは 0.15 g/kg/日が示されている16).日本高血圧学 会の委員会報告によればヒトの生体としての下限値は 1.5 g/日とされているが17),これは腎臓のもつナトリ ウム保持能が機能していることを前提としていると考 えられる.一方無尿の透析患者ではナトリウム保持能 が失われており,血液透析による除水で蓄積したナト リウムを除去することになるが,経験的に水分摂取量 は透析間の体重増加とほぼ等しいことがわかってい る.血液透析患者の透析間の体重増加率と生命予後の 関連が,2009 年度末の統計調査で報告されている18). 栄養関連因子などを補正して有意に生命予後が悪化す るのは,透析間の体重増加が 3%未満の群である.こ れは体重 60 kg の場合,中 2 日で 1.8 kg の体重増加, 一日あたり 600 g であるが,無尿の状態では 10 g の食 塩摂取が生理食塩水 1,111 mL の摂取と等しいことか ら,5.4gの食塩摂取による水分摂取量に相当する.つ
まり体重 60 kg の患者では 5.4 g 未満の食塩摂取量では 栄養関連因子による予後不良のリスクを負うことにな る.日本透析医学会の統計では全血液透析患者の平均 ドライウェイトは男性 60.6 kg,女性 49.3 kg であるこ とを考えると18),一律一日 6 g 未満という制限には検 討の余地があると思われる. 一方,日本透析医学会の統計調査では体重減少率が 7%を上回ると生命予後が悪化する.これは体重 60 kg の透析患者において中 2 日の体重増加が 4.2 kg,一日 あたり 1.4 kg であり,推算した食塩摂取は一日 12.6 g に相当する.これは栄養状態によってはかなり多い食 塩摂取量まで許容される可能性を示しているが,透析 量での補正のみでは体重減少率 5%の増加から生命予 後が悪化する傾向がみられる.つまり 5%を超えたと ころからは透析時間の延長など透析量を増やす工夫が 必要であり,これができなければ体重減少率 5%以内 の増加量,食塩摂取相当で一日 9 g 未満にするのが望 ましいということになる.しかし現時点では血液透析 患者の食塩摂取量に関する議論が不十分であり,一日 6 g 未満を一応の推奨値とせざるを得ないが,患者の 体格,栄養状態,尿量,身体活動度によっては低栄養 や心不全の原因となる危惧もあるため,補足として
「尿量,身体活動度,体格,栄養状態,透析間体重増加 を考慮して適宜調整する」を加えた.今後は特に体重 あたりの摂取量を提唱できるようにデータを収集して 議論を重ねるとともに関連学会にも検討をお願いした いと考えている. 腹膜透析患者においては,水分の摂取量は除水量と 尿量の総和と等しいため,これを勘案して示されてい る腹膜透析ガイドラインの摂取量を適用する

 

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