経中隔穿刺(ブロッケンブロー法)とは|左房アブレーションの入口・手順・合併症

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経中隔穿刺(けいちゅうかくせんし/Brockenbrough法・transseptal puncture)とは、大腿静脈から入れたカテーテルを右房まで進め、左右の心房を隔てる心房中隔の「卵円窩(らんえんか)」を針で貫いて左房へ到達する手技です。静脈側からは直接届かない左房・肺静脈にアクセスするための入口であり、肺静脈隔離(PVI)をはじめとする左房系アブレーションの土台になります。1959年にRossとCopeが報告した古典的手技が原型です。

なぜ必要か:左房は静脈から「直接」入れない

足の静脈から進むカテーテルは、右房・右室・肺動脈という右心系までは自然に到達できます。しかし左房や肺静脈は、そのままでは静脈側から入れません。そこで、右房と左房を隔てる壁(心房中隔)の薄い部分を通り抜けて左房に入る必要があります。心房細動アブレーション(PFA・クライオ・高周波いずれも)、左側の副伝導路や左房起源の心房頻拍、さらに左心耳閉鎖術や僧帽弁のカテーテル治療でも、この経中隔アクセスが前提になります。

卵円窩:中隔の「穿刺していい薄い場所」

心房中隔のほとんどは厚い筋肉ですが、中央やや下後方に卵円窩という膜状に薄くくぼんだ部分があります。ここは胎児期に血液が通っていた名残で、周囲の筋性中隔より薄いため、安全に穿刺できる唯一のランドマークです。カテーテル先端を中隔に沿わせて下げてくると、卵円窩で先端がわずかに引っかかる(はまり込む)感触が得られ、これが穿刺位置の目印になります。
右房 (RA) 左房 (LA) 卵円窩 穿刺針→左房へ 大腿静脈からのカテーテル
右房から中隔の卵円窩を穿刺し、左房へアクセスする(模式図)

手技の流れ

  1. 大腿静脈からシースを進め、上大静脈まで挿入する。
  2. 中に通した穿刺針(ブロッケンブロー針など)とシース(SL/Mullinsシース)を、中隔に沿わせながらゆっくり引き下げる。
  3. 卵円窩で先端が引っかかったら、位置を確認して針を進め、中隔を穿刺する。
  4. 針先が左房に入ったことを圧波形・造影・エコーなどで確認し、シースを左房へ進める。
左房到達後は、そのシースを通してアブレーションカテーテルやマッピングカテーテルを左房へ導入します。

ガイダンス:透視に加えてエコーで安全に

従来はX線透視と圧モニタ・造影を頼りに行われてきましたが、近年は心腔内エコー(ICE)や経食道エコー(TEE)を併用し、卵円窩の膨隆(テンティング)や周囲構造をリアルタイムで確認しながら穿刺する施設が増えています。エコー併用は、大動脈など危険な部位への誤穿刺を避けるのに役立ちます。

使用デバイス(各社)

基本は穿刺針+シースの組み合わせです。古典的なブロッケンブロー針とSL/Mullinsシースに加え、近年は針先で高周波を用いて中隔を貫くRFニードル/RFワイヤが普及し、硬い中隔でも過度の力をかけずに穿刺しやすくなっています。
  • ボストン・サイエンティフィック:RF Needle/VersaCross/SupraCross などの心房中隔穿刺システム。
  • J-Sol Medical(国内):AccuSafe 経中隔穿刺ワイヤ(RF方式)。
  • 各社のステアラブルシース:左房内でカテーテルを操作しやすくする。

合併症

最も注意すべきは、卵円窩以外を誤って穿刺することによる心タンポナーデ(心穿孔)です。大動脈基部・左房後壁・右房自由壁などへの誤穿刺が原因になり得ます。そのほか血栓・空気による塞栓などがあります。穿刺後の中隔の孔は通常自然に閉じます。透視・圧・エコーによる位置確認と、抗凝固管理・脱気の徹底が安全の要です。

参考・出典

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