3Dマッピングシステムとは(定義・何のため)
3Dマッピングシステムとは、心臓の中に入れたカテーテルの位置と、そこで拾った電気信号(心内心電図)を組み合わせ、心腔の3次元形状・カテーテル位置・電気的興奮の広がりを画面上に可視化する装置です。心臓内の”GPS”にたとえられることもあります。
不整脈カテーテルアブレーションでは、「どこが不整脈の原因(起源や回路)なのか」「どこを焼灼したか」を立体的に把握することが重要です。3Dマッピングはこれを支援し、あわせてX線透視の被ばく低減にもつながるとされています(Wikipedia: Electroanatomic mapping、APHRS 2019 consensus)。手技全体の流れはEPS/アブレーションの全体像を参照してください。
何が見えるか(3D形状・カテ位置・興奮の広がり)
3Dマッピングで得られる情報は、大きく3つに整理できます(ScienceDirect: 3D mapping in the EP lab)。
- 3D形状(ジオメトリ):カテーテルを心腔内で動かした軌跡から、心房・心室などの3次元的な”殻(シェル)”を作成します。
- カテーテル位置:シェル上に、いま操作しているカテーテル先端の位置がリアルタイムで表示されます。
- 興奮の広がり(電気情報):各点で拾った電気信号のタイミングや電位の大きさを色分けし、興奮がどこから、どのように広がるかを見えるようにします。
位置検出の原理(磁気式/インピーダンス式)
カテーテルの位置を求める方式は、大きく2系統あります。
- 磁気式(磁場ベース):患者の下などに置いた発生源から弱い磁場を出し、カテーテル先端のセンサ(コイル)が磁場を検出して位置を三角測量します。金属や生体インピーダンスの影響を受けにくく、安定しやすいのが特徴とされます(Wikipedia)。
- インピーダンス式(電流/電界ベース):体表に貼ったパッチ(電極)から微弱電流を流して心臓内に電界を作り、カテーテル電極が感じるインピーダンス(電位)から位置を推定します。専用センサを持たない一般的なカテーテルも位置表示しやすい一方、体液量や電極の状態などインピーダンス変動の影響を受けやすい面があります(PMC 総説)。
近年は両方式を組み合わせ、精度と安定性を両立させるハイブリッドが広く用いられています。
主なマップの種類
アクチベーションマップ(興奮伝播マップ)
各点の局所興奮時刻(LAT)を基準点と比較し、興奮が「早い→遅い」を色で表したものです。興奮がどこから始まり、どう広がるかが分かるため、巣状(focal)か回路(リエントリ)かの見極めや、頻拍の起源・回路同定に使われます(ACC: The Value of Mapping)。
ボルテージマップ(電位マップ)
各点の電位波高(peak-to-peak振幅)を色で表したものです。電位が低い領域は線維化・瘢痕(scar)などの構造的異常を示唆するとされ、心室頻拍の基質評価などで重要です(PMC 総説)。
画像融合(イメージインテグレーション)
事前に撮影したCTやMRIの心臓画像を3Dシェルに重ね合わせ、肺静脈などの解剖や瘢痕領域をより分かりやすく表示する機能です。肺静脈隔離(PVI)などで解剖把握の補助に用いられます。
代表的システム(事実ベースの違い)
各社で位置検出の考え方に違いがあります。
- CARTO(Biosense Webster / Johnson & Johnson):磁気式を基本に、電流ベースの位置検出も併用。専用センサ内蔵カテーテルが必要。空間分解能は<1mmとされる報告あり。
- EnSite(Abbott、旧St. Jude):インピーダンス式が基本。新しい世代(EnSite X 等)では磁気式を統合し、インピーダンス変動時の精度維持を図るとされます。
- Rhythmia(Boston Scientific):磁気+インピーダンスのハイブリッド。高密度マッピング用の多電極バスケットカテーテル(Orion)と自動解析で、遠位(far-field)信号の除去や高密度マップ作成を特徴とします。
いずれもアクチベーション/ボルテージマップやCT/MRI画像融合に対応します(PMC 総説)。
アブレーションでの使いどころ
- 起源・回路の同定:アクチベーションマップで頻拍の起源や回路を推定。
- 基質評価:ボルテージマップで瘢痕・低電位領域を把握(VTなど)。
- 焼灼部位の記録:焼灼した点をタグとしてシェル上に残し、ライン形成の連続性を確認。PVIや高周波アブレーション(RF)での通電位置の可視化に役立ちます。
- 被ばく低減:透視への依存を減らす一助とされます。
CEの役割
新人CE・学生がまず押さえたい実務ポイントです(施設プロトコルに従ってください)。
- システムの準備・設定:起動、患者パッチ(リファレンス電極)の適切な貼付、各種パラメータ・フィルタ設定。パッチのずれや接触不良は位置精度に影響します。
- マップ作成の補助:ジオメトリ作成、点の採取(アノテーション)補助、不良点の除外、LATの基準設定など、医師の操作を支援。
- 信号品質の管理:ノイズ・ドリフト・インピーダンス変動への気づきと対処。心内心電図の見え方は心内心電図の記事も参照。
- 記録・トラブル対応:マップ・タグの保存、機器連携(アブレーションジェネレータ等)の確認、異常時の一次対応。
※本記事は概説です。設定値・手順は装置の添付文書・各施設の取り決めが優先されます。
参考・出典
- Advanced Electroanatomic Mapping: Current and Emerging Approaches(PMC、オープンアクセス)
- Electroanatomic mapping(Wikipedia)
- Three-dimensional mapping in the electrophysiological laboratory(ScienceDirect)
- The Value of Mapping: A Primer For Clinicians(American College of Cardiology)
- 2019 APHRS expert consensus statement on three-dimensional mapping systems for tachycardia(HRS/EHRA/LAHRS)
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