対象となる疾患
- 胆嚢結石症
- 急性胆嚢炎
- 胆嚢ポリープ
- 胆嚢腺筋腫症
- 胆道がん(胆嚢がんを含む)
最大の合併症は胆管損傷
胆嚢を切り離すには、胆嚢管と胆嚢動脈を処理します。このとき、胆嚢管だと思って切ったものが実は総胆管だった——という誤認による損傷が起こりえます。これが胆管損傷(bile duct injury)です。 胆道学会誌の総説では「Critical View of Safety(CVS)の成立は誤認損傷の回避に有用である」とされています。つまりCVSは、切る前に「本当にこれが胆嚢管か」を構造的に担保するための手順です。
Critical View of Safety(CVS)の3要件
米国内視鏡外科学会(SAGES)の Safe Cholecystectomy Program では、CVSの成立要件が次の3つと定義されています。| ① | The hepatocystic triangle is cleared of fat and fibrous tissue. 肝胆嚢三角から脂肪と線維組織を除去する |
| ② | The lower one third of the gallbladder is separated from the liver to expose the cystic plate. 胆嚢の下1/3を肝臓から剥離し、胆嚢板を露出させる |
| ③ | Two and only two structures should be seen entering the gallbladder. 胆嚢に入る構造物が「2本、それ以外にない」ことを確認する |
確認するタイミングを止めて作る
SAGESは、クリップや切離の前に手を止める時間を設けることを勧めています。The Intra-operative Momentary Pause should consist of a stop point in the operation to confirm that the CVS has been achieved utilizing the Doublet View. SAGES Safe Cholecystectomy Program手術室全体で「いま止まる」という合図を共有するという意味では、タイムアウトと同じ発想です。CE・看護師にとっても、この一拍がある術式だと知っておく意味があります。
胆管損傷を防ぐ6つの戦略(SAGES)
- Critical View of Safety の手法を用いる
- すべての症例で解剖学的破格の可能性を理解しておく
- 術中胆道造影などの画像手法を積極的に使う
- 管状構造をクリップ・切離する前に術中の一時停止を検討する
- 危険な領域を認識したら剥離を止め、代替術式を検討する
- 剥離が難しいときは他の外科医の応援を得る
CVSが作れないとき — 危険回避手術
炎症を繰り返した胆嚢では、剥離すべき層が瘢痕化してCVSを作れないことがあります(difficult gallbladder)。無理に進めるのではなく、術式を切り替えるのが正解とされています。Calotの三角が線維化瘢痕化して剥離が困難になり、CVSを成立させることが不可能な、いわゆるdifficult gallbladderにおいては、胆嚢亜全摘術に代表される危険回避手術、特にfenestrationを積極的に選択すべきである 腹腔鏡下胆嚢摘出術における危険回避手技と回避手術(胆道)SAGESも同様に、解剖学的条件が危険すぎる場合には「腹腔鏡下胆嚢亜全摘術、胆嚢瘻造設、開腹移行を、執刀医の判断に基づいて検討する」としています。「引き返す」ことが失敗ではなく正しい判断である、というのが共通した考え方です。
急性胆嚢炎の診療ガイドライン
急性胆嚢炎については「急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2018」(2018年9月・通称TG18)があります。作成主体は日本腹部救急医学会、日本肝胆膵外科学会、日本胆道学会、日本外科感染症学会、日本医学放射線学会ほかの合同で、重症度判定や治療方針の標準が示されています。 重症度分類(Grade I〜III)や手術時期・ドレナージの具体的な推奨については、ガイドライン本文で確認してください(本記事では原典で確認できた範囲を超える記載はしていません)。——————————
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