ハーモニック(超音波凝固切開装置)とは|原理・電気メスとの違い・熱傷対策を解説

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ハーモニックは、ブレードを超音波で振動させて組織を凝固・切開する 装置です。添付文書上の一般的名称は「超音波手術器(超音波処置用能動器具)」で、使用目的は「本装置は内視鏡下手術及び外科手術における組織の凝固及び切除に用いる」と定められています。電気メスとは熱の作られ方がまったく違い、それが使い分けと安全対策の違いにつながります。
ハーモニックの本体とハンドピース
ハーモニック(超音波凝固切開装置)

基本情報

一般的名称超音波手術器(超音波処置用能動器具)
販売名ハーモニック スカルペル
承認番号20800BZY00528000
使用目的内視鏡下手術及び外科手術における組織の凝固及び切除
振動周波数50〜60 kHz
出力レベル1〜5段階(200〜400 mA)
(出典:ハーモニック スカルペル 添付文書)

原理:振動でタンパクを変性させる

添付文書には「超音波の発生と同様の原理で、メスの先端を超高速に振動させることにより切開能を有」すると記載されています。1秒間に5万回以上という高速振動で、ブレードと組織の間に摩擦が生じ、その熱でタンパクが変性して血管が塞がり(凝固)、同時に組織が切れる(切開)という仕組みです。 ブレードとクランプアームで組織を挟み込む構造になっているため、掴む・凝固する・切るを1本の器具で完結できます。持ち替えの回数が減るのが、内視鏡下手術で重宝される理由のひとつです。
ハーモニックの先端部。ブレードとクランプアームで組織を挟む構造
先端部:ブレードとクランプアームで組織を挟み、超音波振動で凝固・切開する

電気メスとの違い

どちらも「熱で組織を処理する」点は同じですが、熱をどう作るかが根本的に違います。
電気メスハーモニック(超音波)
熱の作り方高周波電流によるジュール熱・アーク放電ブレードの高速振動による摩擦熱
体に電流を流すか流す。対極板で回収する必要がある流さない
切開と凝固の切替波形(連続/断続)で切り替える出力レベルと挟む力で調整する
先端の温度約300℃(PMDA医療安全情報)電気メスより低いとされる
電気メスは体内を電流が通り、対極板で回収します。国立長寿医療研究センターの解説では、電圧を低く抑えるモードほど「電流値が非常に高くなります。電流値が多くなるということはそれを回収する対極板の設置には十分な注意が必要です」とされています。対極板の貼り方が熱傷に直結するのは、電気メス固有の問題です。 電気メスの切開・凝固の切り替えについては、同解説にこうあります。切開は「連続的に電流を加え続ける事で発生するジュール熱がアーク放電によるスパークを上回ることで…組織はよく切れるが血液は凝固しない」、凝固は「断続的に電流を加える事で組織に冷える時間を与えるため…組織はあまり切れないが血液は凝固する」。 この違いは、ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル カンパニーの製品紹介でも明確に書かれています。同社はHARMONIC®を「電気を体に流さず、超音波振動を利用し、組織を切離・凝固する」ものと説明し、これに対しENSEAL®を「バイポーラ電気メスの技術を応用し7mmまでの血管などの組織をシール可能」なものとして区別しています。なお両者は「ジェネレーターGEN11」で共用できるとされています。

★ 熱傷リスク:ブレードは使用後も熱い

ハーモニックで最も重要な安全上のポイントがこれです。添付文書には次の警告があります。
ハンドピースを握るのが不快な温度になった際には使用を中止すること。[熱傷を防ぐため。] ハーモニック スカルペル 添付文書【警告】
さらに「組織中で長時間作動させるとブレードが熱くなる場合がある」とされ、使用上の注意には「作動後は組織、ドレープ、手術着、その他に誤ってブレードが接触しないようにすること」と明記されています。 この「作動後に置いた先で起きる事故」が実際にどう起きるかは、PMDA医療安全情報No.33が具体的です。※同資料の対象は光源装置・電気メス・レーザメスで、超音波凝固切開装置への言及はありませんが、「使い終わった器具をどこに置くか」という構図は共通です。
手術中、電気メスをドレープの上に置いていたところ、ドレープが焦げて患者の大腿部にやけどを認めた。 PMDA医療安全情報 No.33
同資料は「使用中の電気メスの先端部は非常に高熱(約300℃)である」とし、「出力を止めてからもしばらくの間、100℃以上の熱を持っています!」と警告しています。推奨される対応は次の3つです。
  • 器械台への移動
  • ホルスターへの収納
  • シリコンマットの使用
「使い終わったら必ずホルスターへ」——これがCEとして周知すべき最重要事項です。ドレープの上に置く運用が残っている現場は、そこから直す価値があります。

現場での使い方(学会報告より)

日本低侵襲心臓手術学会がHarmonic 1100について、心臓外科(MICS)での実際の使用を報告しています。器具の特性として「先端が細く、視認性に優れており、シャフトも長くてMICSアプローチに適していて、360度回転可能」と評価されています。 ここで重要なのが、熱傷を避けるためのブレードの向きです。
心膜切開の際は黒色のブレードを外側にして、内部の大動脈や心臓組織への熱傷を防ぐのが重要なポイント 日本低侵襲心臓手術学会
熱を持つ側がどちらを向いているかを意識する——添付文書の「作動後は組織に誤ってブレードが接触しないように」を、現場の手技レベルに落とすとこうなります。 出力レベルについても「当初はレベル2で行っていたが…最近ではレベル5で行っており、この場合でも止血効果を維持しつつ、比較的早く切開が可能」との経験が報告されています。※これは特定施設の運用であり、標準的な設定ではありません。自施設のプロトコルに従ってください。

禁忌・禁止

  • 骨の切開には使用しないこと
  • 避妊のための卵管閉塞には使用しないこと
骨に使わないことは、軟部組織用のブレードで硬組織を扱うと器具の破損・過熱を招くためです。骨には専用の骨手術用器械を使います。
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参考(一次情報)

本記事は2026年8月に、添付文書とPMDA医療安全情報に基づいて全面的に書き直しました。

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