房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT:AV Nodal Reentrant Tachycardia)とは、房室結節とその周囲に存在する
2本の伝導路(速伝導路と遅伝導路)の間で電気がぐるぐると回ることで起こる頻拍です。発作性上室頻拍(PSVT)のなかで
最も頻度が高いタイプで、突然始まり突然止まる動悸を特徴とします。
EPS(電気生理学的検査)で診断し、多くはアブレーションで根治できます。
メカニズム:二重房室結節伝導路とリエントリー
房室結節の周囲には、性質の異なる2つの伝導路があることがあります。これを
二重房室結節伝導路(dual AV nodal pathway)と呼びます。
- 速伝導路(fast pathway):伝導が速いが、不応期が長い(=一度使うと次まで休む時間が長い)。
- 遅伝導路(slow pathway):伝導は遅いが、不応期が短い(=早く回復する)。
通常はこの2本の性質差が問題になりません。しかし、うまく早いタイミングの期外収縮が入ると、速伝導路が「まだ休んでいる」間に遅伝導路だけを電気が通り、心室へ下りたあと速伝導路を逆行して心房に戻る——という
回路(リエントリー)が成立します。これが延々と回るのがAVNRTです。多くは遅伝導路を順行・速伝導路を逆行する
通常型(slow-fast型)です。
心電図の特徴
頻拍中は規則正しい narrow QRS 頻拍(おおむね150〜200拍/分程度)を示します。心房と心室がほぼ同時に興奮するため、
P波はQRSに埋もれて見えにくいのが典型です。QRSの終わりに偽性s波(下壁誘導)や偽性r’波(V1)として心房興奮が顔を出すことがあり、鑑別の手がかりになります。
EPSでの所見:AVNRTを裏づける
AVNRTかどうかは、
EPSのプログラム刺激で確かめます。
- AH間隔のジャンプアップ:期外刺激(S2)の連結期を少しずつ縮めると、ある瞬間に速伝導路がブロックされ遅伝導路へ切り替わり、AH間隔が急に大きく延びます。二重伝導路の存在を示す代表的所見です。
- エコー現象・頻拍の誘発:切り替わった直後に興奮が速伝導路を逆行し、心房が跳ね返る(エコー)。これが連続するとAVNRTが誘発されます。
- 極めて短いVA関係:通常型では心房と心室がほぼ同時。心室興奮(V)に対する心房興奮(A)のタイミングが非常に短いのが特徴です。
他の頻拍との鑑別
narrow QRS頻拍には、AVNRTのほかに副伝導路を介する
AVRTや心房頻拍(AT)があります。心室からのペーシング(VA関係のパターン)、パラヒサリアン・ペーシング、頻拍中の刺激に対する反応などのマニューバで切り分けます。VAが極端に短ければAVNRTらしく、心房最早期部位が房室弁輪の一点に偏れば副伝導路を疑う、といった読み方をします。
治療:遅伝導路(slow pathway)アブレーション
薬剤で抑えきれない、あるいは根治を希望する場合はカテーテルアブレーションが選択されます。標的は
遅伝導路で、三尖弁輪と冠静脈洞入口部の間(コッホ三角の下方)を焼灼します。速伝導路や房室結節本体は温存するのが原則です。
焼灼が有効な部位では、
接合部調律(junctional rhythm)という「房室接合部からの単発の心拍」が現れることが多く、良い目印になります。ただし接合部調律が速すぎたり、心房への逆行伝導が途切れたりする場合は
房室ブロックの危険サインで、直ちに通電を止めます。
合併症:房室ブロックに最大限の注意
最も避けたい合併症が
房室ブロック(完全房室ブロック)です。房室結節本体やHis束に近い場所を焼灼すると、正常の房室伝導まで壊してしまい、ペースメーカが必要になる恐れがあります。このため、通電中は接合部調律と房室伝導を注意深く監視し、危険徴候があれば即座に中止します。頻度は低いものの、術者・スタッフが常に意識する合併症です。
参考・出典
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