CART:腹水濾過濃縮再静注法

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CART(Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy):腹水濾過濃縮再静注法についてまとめました。

CART : 腹水濾過濃縮再静注法

CARTの概要


CART(Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy)の略

腹水症(胸水症)患者の腹水(胸水)を採取し、それを濾過、濃縮して、患者に再静注する治療法
腹水を腹腔からぬいて、細菌やがん細胞を取り除き、アルブミンなどが濃縮された腹水を体へ戻す方法です。
お腹の中に溜まった水を抜き、それを綺麗にして静脈に戻す 

腹水とは

腹腔に通常より水がたくさん貯まった状態のこと
お腹にある臓器をつつむ膜を腹膜(ふくまく)といいます。
腹膜は、臓器と臓器の摩擦を少なくするために腹腔(ふくくう)とよばれるすきまをつくっています。

腹腔には通常20~50mLの水が入っていますが、さまざまな病気の影響で通常よりたくさん貯まった水、または状態を腹水といいます。

腹水が溜まる原因

肝硬変などによる血液中のアルブミンの低下

肝硬変などにより、アルブミンをつくる機能が低下します。
血液中のアルブミンが少なくなると、血管の外に漏れ出た水分を血管内に戻すことができなくなり、腹水がたまります。

病気やがんなどによるもの

炎症性の病気やがんなどにより、血管から血液成分や水分がしみだしやすくなり、腹水がたまります。

その他の原因

その他にも、門脈※2圧の上昇など、さまざまな原因で腹水がたまります。

CARTとは?

施行方法

腹水採取
採取量:初回の採取量は3,000mLを目安とする。
採取速度:1,000〜2,000mL/hrを目安とする。
【輸液する場合】
(採取腹水量-濃縮後腹水量)の1/2〜1/3を目安とし、電解質やアミノ酸を輸液する。
腹水濾過濃縮処理
腹水処理速度(腹水濾過開始から濃縮終了までの速度)は、3,000mL/hr以下、好ましくは1,000〜2,000mL/hrにする。
【濃縮倍率】
原腹水の蛋白濃度を事前に測定し、濃縮率を適切に設定する。
腹水再静注
濾過濃縮後腹水の静注速度は100〜150mL/hrとする。
【濾過濃縮腹水の再静注】
濾過濃縮腹水は高濃度の蛋白を含むため、再静注の際は輸血セットを使用する。

CARTの特長

QOLの改善
・自覚的苦痛の軽減
・循環血漿量の増加
・腹圧の軽減
・血漿浸透圧の上昇
・貯留間隔の延長
お腹の水を抜くことでお腹の張りや苦痛が和らぐ
お腹の水の中にあるアルブミンが血管内に戻されてることで浸透圧があがる
アルブミン製剤の節減
・自己蛋白の使用により、アルブミン製剤の節約が可能
・自己蛋白の使用により、未知の病原因子による感染症の危険性がない
自分の体液を使うので、他の薬を使う必要がない
また、細菌の感染がない(もし細菌がいてても元々いてる細菌)

CARTの副作用

CARTによる主な副作用は発熱、悪寒(おかん)、血圧上昇、頭痛、嘔気(おうき)、戦慄(せんりつ)(高熱がでて、からだががたがたとふるえること)です。 
また、発生頻度は不明ですが、CARTを行うことにより以下の副作用が報告されています。 
溶血(ようけつ)(赤血球がこわれ、赤血球中に含まれるヘモグロビンが血液中に出ること)、血圧低下、嘔吐(おうと)、顔色不良、ほてり又は呼吸困難、ショック等の異常。

濾過法

ポンプ式
血液浄化用のローラーポンプを用いて濾過濃縮を行います。腹水の性状によりフィルターの圧上昇をおこすことがあるため、設定した圧力の範囲内で処理を行います。
落差式
処理する腹水の自重を用いて、装置を使用せず濾過濃縮を行います。腹水の性状によっては時間を要する、もしくは処理が完遂しない場合もあります。

保険適用

K635 胸水・腹水濾過濃縮再静注法
特定保険医療材料名称材料価格手術料
腹水濾過器、濃縮再静注用濃縮器63,700円(回路含む)胸水・腹水濾過濃縮再静注法 4,990点

(厚生労働省告示第六十一号・令和2年3月5日)
(厚生労働省告示第五十七号・令和2年3月5日)
診療報酬算定方法に伴う実施上の留意事項について
K635 胸水・腹水濾過濃縮再静注法
一連の治療過程中、第1回目の実施日に、1回に限り算定する。
なお、一連の治療期間は2週間を目安とし、治療上の必要があって初回実施後2週間を経過して実施した場合は改めて所定点数を算定する。
(保医発0305第1号・令和2年3月5日)
特定保険医療材料の定義について
腹水濾過器、濃縮再静注用濃縮器(回路を含む。)
次のいずれにも該当すること。
(1)薬事承認又は認証上、類別が「機械器具(7)内臓機能代用器」であって、一般的名称が「腹水濾過器」又は「腹水濃縮器」であること。
(2)難治性胸水、腹水症等の患者について、当該患者の胸水又は腹水中の自己有用蛋白成分の再利用を行うことを目的に、患者胸水又は腹水中の除菌、除細胞等を行う濾過器及び濾過後の胸水又は腹水を適正な有用蛋白成分濃度に調整する濃縮器(回路を含む。)であること。
(保医発0305第12号・令和2年3月5日)
包括評価制度(DPC)における診療報酬算定について
「K635 胸水・腹水濾過濃縮再静注法」は、手術の部で算定されます。
手術の部で算定する特定保険医療材料及び手術料は出来高による算定が可能ですので、CARTにかかる材料価格、手術料は、出来高で算定が可能です。


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参考

https://www.cart-info.jp/ascites/index.html
https://www.am-blood-purif.com/field/cart/about/

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