IMR/CFR測定手順を解説

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IMR/CFR測定手順を解説します。

基礎概念と生理学的背景

冠微小循環の役割

  • 直径 <200 µm の抵抗血管が冠血流の大部分を制御。
  • 構造的異常(リモデリング)と機能的異常(攣縮・内皮機能障害)に大別。

IMR の定義

  • IMR = Pd × Tmn
    • Pd: 末梢冠動脈圧(mmHg)
    • Tmn: 最大充血下平均通過時間(ms)
  • 負荷薬剤(静注アデノシン 140–210 µg/kg/min)が必要。

CFR の定義

  • CFR = Qmax / Qrest
    • 熱希釈法または Doppler 法で流量を算出。
  • 大血管+微小循環双方の「血流予備能」を評価。

測定プロトコール

ステップIMRCFR
センサワイヤPressureWire X™ など同左(熱希釈) or ComboWire (Doppler)
校正大動脈圧ゼロ点合わせ、Equalise同左
負荷薬剤必須(アデノシン i.v./i.c.)同左 or ATP
データ取得Pd・Pa・Tmn を 3 回以上安静・最大拡張各 3 回以上
解析ソフトCoroventis™、CAAS Workstation同左
Tips :
  • 線形トレース品質指標(Signal Quality Index ≥90%)を確認。
  • 心房細動ではビートフィルタ平均化を使用。

カットオフ値と診断アルゴリズム

組合せ病態推定推奨対応
CFR <2.0 & IMR ≥25微小循環障害 (CMD)β遮断薬+Ca拮抗薬、ACEi、生活指導
CFR <2.0 & IMR <25供給量不足/高需要状態負荷条件評価、攣縮試験
CFR ≥2.0 & IMR ≥25高抵抗性 CMD(rare)二次評価;心筋炎・過形成など除外
CFR ≥2.0 & IMR <25正常 or 症候非虚血性他原因検索
フローチャート例:
  1. FFR/iFR 正常でも症状残存 ➡ IMR + CFR。
  2. CFR <2.0 なら IMR を分岐判定。
  3. 治療後は IMR <25 かつ CFR ≥2.0 を目標。

臨床アウトカムとエビデンス

主要研究

  • DEFINE‑FLOW (2020):IMR ≥25 症例で MACE リスク 2.5 倍。
  • CORMICA (2018):マイクロ循環指標に基づく治療アルゴリズムで angina 改善率 85%。
  • ESC 2024 Microvascular Angina GL:クラス I 推奨で IMR/CFR の同時測定を明記。

予後指標

  • IMR は 1 単位上昇で心不全入院リスク 3% 増。
  • CFR <2.0 は全死亡・MI の独立予測因子 (HR 1.9)。

手技ピットフォールとトラブルシューティング

問題原因解決策
不整脈で Tmn 変動RR 間隔不定連続 5 ビート平均を取得
Drift >3 mmHgワイヤ位置変化再 Equalise、必要ならワイヤ交換
アデノシン副作用徐脈・AVBATP or i.c. nitro 併用、短時間投与

熱希釈法の説明

室温の生食を冠動脈に注入すると、PressureWire™ X Guidewireは近位および遠位センサーを通過する生食の温度変化を検出します。
冠動脈の血流は、生食が近位センサーと遠位センサーの間を通過するのにかかる時間に基づいて推定されます。
生食が2点間を通過するのにかかる時間(秒)は、平均通過時間(Tmn)ととして記録されます。

PressureWire™ X Guidewireで血流を測定

PressureWire™ X Guidewireには3つのセンサーがある
• FFR、RFRを測定する圧力センサー
• 熱希釈法により血流量を測定する2つの温度センサー

IMRとCFR の測定手順

セットアップ(カテーテル/PressureWire™ X Guidewire/マニホールド)

カテーテル
• サイドホールなしの6 Fr ガイディングカテーテルを推奨
• 安定したフラッシュを実施するため、冠動脈入口部の安定した位置に保つ
• 安静時のフラッシュと最大充血時のフラッシュ間で安定した位置を維持する
• ガイディングカテーテルのディープエンゲージを避ける
• 圧力測定の前に他のデバイスをすべて取り外す

PressureWire™ X Guidewire セットアップ
• 遠位センサーをガイディングカテーテル入口部から 6 cm以上distalへ配置
• 測定の間は常に同じ位置を維持する
• 生食注入中のワイヤーの動きに注意する

マニホールド
• フラッシュラインに三方活栓とマニホールドを接続する
• 冠動脈の熱希釈フラッシュには、小さなシリンジ(3ccを推奨)を使用する

一般の注意事項

・安静時注入の際は、カテーテルをフラッシュすることで造影剤残留物による充血効果を回避する
・血管収縮を防ぐために、病院の手順/方針に従って血管拡張薬を使用する
・Hyperemiaにおける熱希釈法は、持続時間の長い最大充血薬を使用する
・注入には室温の生理食フラッシュをする
・開始する前にテスト注入を実行し、遠位温度が>2°C低下する事を確認する
・生食注入直後に三方活栓を元に戻して圧が反映されていることを確認

カットオフ値




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参考

https://vascular.abbott.com/rs/111-OGY-491/images/Physiology_CMD_IMR-CFR%20Mesurement-MAT-2106967%20v2.0d.pdf?transition=ht-phy-cmd&mkt_tok=MTExLU9HWS00OTEAAAGTPpyISCYozcMTSH881a1jeoSqnzat-lEUa9r_wpZNA1fF17iQ2V61eM5A2cUWf-dd1vavTJI03PbR3q–7JmhRF_Liio–iH6L7z8-ElyVQI

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