腎性貧血

腎性貧血について

 

 

 

 

腎性貧血の診断

1)腎性貧血とは,腎臓においてヘモグロビンの低下に見合った十分量のエリスロポエチン(EPO)が産生されないことによってひき起こされる貧血であり,貧血の主因が腎障害(CKD)以外に求められないものをいう.保存期 CKD 患者では,血中 EPO 濃度の測定が診断に有用なことがある.
2)EPO 産生低下以外の貧血発症要因として,何らかの因子による赤血球造血の抑制・赤血球寿命の短縮・鉄代謝の障害・透析回路における残血・出血・栄養障害など,さまざまな因子の関与が想定されているが,十分に解明されていない.
3)貧血の診断基準値としてはヘモグロビン(Hb)値を用いるべきであり,日本人における貧血の診断は年齢,性差を考慮して以下の基準で行うのが妥当である.腎性貧血の診断基準はこれに従う.ただし,治療における判断は各章に推奨・提案する内容を基準に行う.

60 歳未満 60 歳以上 70 歳未満 70 歳以上
男性 Hb値<13.5 g/dL Hb値<12.0 g/dL Hb値<11.0 g/dL
女性 Hb値<11.5 g/dL Hb値<10.5 g/dL Hb値<10.5 g/dL

4)腎性貧血の診断では,貧血をきたすさまざまな血液疾患を鑑別する必要がある. 血液疾患の鑑別には
1 白血球,血小板異常の有無(芽球の存在を含めた分画,形態,数の異常)
2 MCV 値による貧血の分類(小球性・正球性・大球性)
3 網赤血球数の増減
4 血中 EPO 濃度の測定
が役立つ.

 

 

 

腎性貧血治療の目標 Hb 値と開始基準

1)成人の血液透析(HD)患者の場合,維持すべき目標 Hb 値は週初めの採血で 10 g/dL 以上 12 g/dL 未満とし,複数回の検査で Hb 値 10 g/dL 未満となった時点で腎性貧血治療を開始することを推奨する.(1C)
2)成人の保存期慢性腎臓病(CKD)患者の場合,維持すべき目標 Hb 値は 11 g/dL 以上 13 g/dL 未満とし,複数回の検査で Hb 値 11 g/dL 未満となった時点で腎性貧血治療を開始することを提案する.(2C) ただし,重篤な心・血管系疾患(CVD)の既往や合併のある患者,あるいは医学的に必要のある患者 には Hb 値 12 g/dL を超える場合に減量・休薬を考慮する.(not graded)
3)成人の腹膜透析(PD)患者の場合,維持すべき目標 Hb 値は 11 g/dL 以上 13 g/dL 未満とし,複数回 の検査で Hb 値 11 g/dL 未満となった時点で腎性貧血治療を開始することを提案する.(2D)PD 患者 の ESA 投与方法は,基本的に保存期 CKD 患者に準じて考えることが望ましい.(not graded)
4)HD,PD,保存期 CKD 患者のいずれにおいても,実際の診療においては個々の症例の病態に応じ,上 記数値を参考として目標 Hb 値を定め治療することを推奨する.(1C)

 

 

ESA 投与法―投与経路,投与量―

 

1)HD 患者の場合,ESA の投与経路は,透析回路を通しての静脈内投与を行う.
2)ESA の投与量や投与回数は,ESA の種類,投与開始時の Hb 値,貧血改善目標値,予測される,あるいは目標とする貧血改善速度などを勘案して決定されるべきである.
3)保存期 CKD 患者および PD 患者の ESA 投与経路は,ともに皮下注が望ましい.なお,PD 患者の HD併用療法の際には,HD に準じて透析回路を通しての静脈内投与を行う.

 

 

 

鉄の評価と補充療法

 

鉄の評価方法

 

1)貧血を合併する CKD 患者は鉄欠乏・鉄過剰となることがあるため定期的な鉄評価を行う(鉄投与中は 月 1 回,非投与時には 3 か月に 1 回程度).(not graded)
2)鉄評価には血清フェリチン値,TSAT を用いることを推奨する.(1C)

 

鉄剤の投与・中止基準

 

1)ESA 製剤も鉄剤も投与されておらず目標 Hb 値が維持できない患者において,血清フェリチン値が 50 ng/mL 未満の場合,ESA 投与に先行した鉄補充療法を提案する.(2D)
2)ESA 投与下で目標 Hb 値が維持できない患者において,血清フェリチン値が 100 ng/mL 未満かつ TSAT が 20%未満の場合,鉄補充療法を推奨する.(1B)
3)ESA 投与下で目標 Hb 値が維持できない患者において,以下の両者を満たす場合には鉄補充療法を提案する.(2C)
・鉄利用率を低下させる病態が認められない場合
・血清フェリチン値が 100 ng/mL 未満または TSAT が 20%未満の場合
4)血清フェリチン値が 300 ng/mL 以上となる鉄補充療法は推奨しない.(2D)

鉄剤の投与方法

 

1)保存期 CKD・HD・PD 患者のいずれも経口もしくは静注にて投与する.(2D)
2)経口鉄剤は貯蔵鉄量を確認しながら 100(105)~200(210)mg/日を投与する.(not graded)
3)静注鉄剤は,保存期 CKD・PD 患者には通院時に 40~80 mg をゆっくり投与する.HD 患者には 40 mgを週 1 回,透析終了時にゆっくり投与する.(2D)
4)静注鉄剤は貧血改善効果の確認と鉄評価を行いながら 13 回投与を区切りとし,血清フェリチン値が300 ng/mL 以上にならないよう投与する.(2D)
5)鉄剤再開の際には鉄評価と出血・血液疾患の有無を確認したうえで慎重に行う.(not graded)

 

 

ESA 低反応性

 

1)ESA 低反応性の患者は予後不良である可能性が高い.
2)ESA 投与初期に低反応性,あるいは ESA 治療中に反応性が低下した患者については,反応性を低下させる因子を精査すべきである.
3)ESA 低反応性は,一定の指標(初期反応性の場合,体重当たり一定量の ESA を投与し,一定期間後のΔHb 値から算出)を用いて,予後との関連について検討された前方視的試験の結果で定義されるべきであるが,現時点でそのようなデータが存在しない.したがって,ESA 低反応性を明確な数字をもって定義することは困難である.
4)わが国の保険診療上認可されている用法・用量で Hb 値が上昇しないか,あるいは目標 Hb 値が維持できない場合は「ESA 低反応性」である可能性がある.

 

 

 

血栓症の既往歴のある CKD 患者の腎性貧血に ESA を使用する場合の抗凝固薬、抗血小板薬併用

1)ESA 治療に抗凝固薬や抗血小板薬を併用することが,血栓塞栓症の発症リスクを軽減させることを検証したエビデンスはない.(not graded)
2)一方,目標 Hb 値 10~11 g/dL の管理において,アスピリンの併用が血栓形成を軽減させる可能性がある.(not graded)

 

担癌患者の腎性貧血治療におけるESA使用

1)貧血を合併した担癌患者に対する ESA 治療は,特に化学療法中の患者において,血栓症や死亡のリスクを増加させる可能性がある.(not graded)
2)担癌患者の腎性貧血に対し ESA で治療することは,血栓症や死亡のリスクを増加させる可能性がある.(not graded)

 

腎性貧血の輸血

 

1)腎性貧血に対する維持治療として,十分な透析療法を施行するとともに,適切な ESA 投与および鉄補充を行い,赤血球輸血は患者の全身状態および症状を改善しうる必要最小限に控えることを推奨する.(1B)
2)急激に進行する貧血を呈する患者や,出血を伴う手術を予定している患者において,必要最小限の輸血を推奨する.(1B)
3)ESA 低反応性を示す持続的な貧血に起因する症状を呈する場合,最小限の赤血球輸血を提案する.(2C)
4)随伴する副作用のために ESA を十分に投与できない場合,最小限の赤血球輸血を提案する.(2C)
5)将来的に腎移植の適応と考えられる患者においては,拒絶反応を惹起する抗体産生(同種感作)を高める危険性があるため,赤血球輸血は可能な限り避けることを推奨する.(1C)

 

 

 

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