透析患者さんは、腎臓の働きが低下して尿から水分を出しにくくなっています。そのため体に余分な水分がたまりやすく、これを透析で抜く処置が「除水」です。透析室で臨床工学技士(CE)が毎回向き合う、透析のいちばん基本的で、いちばん気をつかう操作のひとつです。この記事では、除水とは何か、どういう仕組みで水を抜くのか、そして「速すぎるとなぜ危険なのか」までをわかりやすく整理します。
除水とは
除水とは、透析中に体にたまった余分な水分を、ダイアライザ(人工腎臓)を使って抜くことです。健康な腎臓は尿として水分を排泄しますが、腎不全ではこれが十分にできず、水分が体にたまります。透析では、ダイアライザの膜を通して血液から水分を抜くことで、この余分な水分を体外へ出します。ポイントは「どれだけ抜くか(除水量)」と「どれくらいの速さで抜くか(除水速度)」の管理です。
なぜ除水が必要か
腎臓の働きが低下すると、飲んだ水分や食事の水分が体の外に出せず、体液量が過剰になります。体液がたまりすぎると、高血圧、むくみ(浮腫)、心臓への負担(心不全)、肺に水がたまる(肺うっ血)などにつながります。除水はこうした体液過剰を防ぎ、体内の水分バランスを整えるために行います。
除水の仕組み(限外濾過)
除水は、限外濾過(げんがいろか、UF:Ultrafiltration)という原理で行います。ダイアライザの膜をはさんで、血液側と透析液側に圧力の差(膜間圧力差=TMP)をつくると、その圧力によって血液中の水分が膜を通して抜けていきます。透析装置は、この圧力差をコントロールして、設定した量の水分を抜くように働きます。
除水量の決め方
除水量は、基本的に「今の体重」と「目標体重(ドライウエイト=DW)」の差、つまり前回の透析からの体重増加分をもとに決めます。これに、透析中に補給する分などを加減して最終的な除水量を設定します。適切な体重増加の範囲や除水量の目安は、患者さんの体格・心機能・残腎機能や施設の方針によって異なります。
除水速度と「速すぎ」のリスク
除水で気をつけるのは量だけでなく、抜く速さ(除水速度)です。血液から水分を抜くと、その分を補うように、体の組織(間質)から血管の中へ水分が移動してきます。これを
プラズマリフィリングといいます。
除水速度がこのプラズマリフィリングの速さを上回ると、血管の中の水分が足りなくなり、血圧低下、筋けいれん(つり)、気分不快などが起こりやすくなります。だからこそ、患者さんの状態を見ながら、速すぎない速度で抜くことが大切です。
臨床工学技士が見るポイント
臨床工学技士は、除水の設定だけでなく、透析中の変化にも注意を払います。
- 透析中の血圧の推移
- 患者さんの自覚症状(気分不快・あくび・つり・冷や汗など)
- 設定した除水速度が患者さんに合っているか
- 体重増加とドライウエイトの関係
- BV計(血液量モニタ)での血管内volumeの変化
数字の設定だけで終わらせず、「今この患者さんに、この速さは合っているか」を状態から判断するのがCEの役割です。
まとめ
除水は、透析で体にたまった余分な水分を抜く、透析の基本操作です。ポイントは以下の3つです。
- 除水は限外濾過(UF)で余分な水分を抜く
- 量は体重増加分とドライウエイトから決める
- 速すぎるとプラズマリフィリングが追いつかず、血圧低下などを起こす
除水の考え方がわかると、ドライウエイト管理や透析中の血圧低下といった、より実務的なテーマも理解しやすくなります。
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本記事は医療従事者向けの学習用記事です。実際の除水設定・治療方針は、各施設の運用、患者さんの状態、医師の判断に従ってください。
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