呼吸生理学及び 人工呼吸器の適応
気道の構造と機能 (1) • 呼吸器系を大きく分けると、ガスの通り道で ある気道(鼻腔・口腔から呼吸細気管支まで) と、実際にガス交換という呼吸そのものを 行っている肺胞に分けられる。 上気道 – 鼻腔 • 全気道抵抗の50 % • 加湿機能 – 口腔 – 咽頭 • 下気道 – 喉頭 – 気管 – 気管支 – 細気管支 – 終末細気管支 – 呼吸細気管支 – 肺 • 鼻腔・口腔から声門までが上気道、声門以下が下気道である。• 下気道は肺胞に至るまで23回の分岐がある。
• 気管から16分岐付近の終末細気管支までは輪状軟骨がある。
• 17分岐以下の呼吸細気管支ではこの軟骨はなくなりガス交換に関与する。
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• 成人肺の肺胞表面積は143±12m2,毛細血管の表面積は126±12m2である。
呼吸不全の概念
呼吸とは
生体は必要なエネルギーを、栄養素の酸素より得ている。そのため、外界から酸素を取り込み、代謝産物である炭酸ガスを外界へ放出する。この一連の過程のことをいう 診断基準
① 室内気吸入時の動脈血O2分圧が60mmHg以下となる呼吸障害またはそれに相当する呼吸障害を呈する異常状態を呼吸不全と診断する。
② 呼吸不全の型を2型に分け、動脈血CO2分圧が45mmHgを超えないものをⅠ型呼吸不全、動脈血CO2分圧が45mmHgを超えて異常な高値を 呈するものをⅡ型呼吸不全という。
③ 慢性呼吸不全とは呼吸不全の状態が少なくとも1ヶ月間持続するものをいう。 Ⅰ型呼吸不全 (低酸素血症)
PaCO2が45mmHg以下のもの
O2の取り込みだけが障害
Ⅱ型呼吸不全 (低酸素血症・高炭酸ガス血症)
PaCO2が45mmHgを超えるもの
O2の取り込みとCO2排泄も
両方が障害
正常値 PaCO2=40±5(mmHg)
• 急性呼吸不全
呼吸不全の状態が1ヶ月未満
だいたいⅠ型が多い
• 慢性呼吸不全
呼吸不全の状態が少なくとも1ヶ月
持続するもの
だいたいⅡ型が多い
低酸素血症の原因 (1)
◆ 肺胞低換気
◆ 換気-血流比不均衡
◆ シャント
◆ 拡散障害
動脈血酸素分圧:PaO2
正常値は90~95mmH
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換気量が減少し、CO2が肺静脈血・動脈血に蓄積
PaCO2上昇↑ ⇒ PaO2低下↓
PaCO2×肺胞換気量≒一定
肺胞低換気
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血流の不均衡
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肺動脈が肺胞でのガス交換を受けずにそのまま
左心系に流入すること
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血管と肺胞の間に隙間が空きガス交換が障害される。
●酸素の拡散時間:成人では安静時に0.25秒 ●CO2はO2に比べ約20倍速く拡散
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97 97 正常若年成人
70 93 正常下限
60 90 呼吸不全、軽症
50 85 呼吸不全、入院
40 75 呼吸不全、重症
30 60 意識喪失
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酸素化能の指標
肺酸素化効率の指標肺胞気-動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)
FIO2次第で正常値が変化する。
室内空気:5~15mmHg
100%吸入:>100mmHg
簡便な指標
PaO2/FIO2
CO2が反映されない
<300で高度ガス交換障害
血液による酸素運搬
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血液100ml中溶存酸素量(ml)=0.003×PO2(mmHg) Hbと結合している酸素量(ml)=1.34×Hb(g)×SO2/100 100mlの血液中の酸素量(ml)=溶存酸素+Hbの酸素量 =0.003×PO2+1.34×Hb×SO2/100
酸素運搬量=心拍出量×酸素飽和度/100×ヘモグロビン濃度×1.34
=C.O.×SaO2/100×Hb×1.34
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自発呼吸と陽圧換気の違い
自発呼吸
② 血液も下葉側に多く集まる。
●自発呼吸では吸気に横隔膜を下げて胸郭を拡張することで胸腔内が陰圧になり肺胞に空気が流れ込んでくる
● 吸気時は胸郭、胸腔内圧が陰圧になるので心臓への静脈還流が増加する
● 自発呼吸は肺そのものに圧力を加えるわけではなく自然に満たされる
陽圧換気時
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② 血液は背部の下葉へと流れる。ガス交換が最善の状態ではない。
● 強制換気は気道に陽圧を加えて肺を膨らませる
● 空気を注入する方法なので供給ホース(蛇管)は、はずすことができない
● 自発呼吸とは反対に胸腔内圧が上昇するため静脈還流が減少する(頭蓋内圧上昇、肝うっ血の発生)
● 血圧低下、腎血流低下
● 人工呼吸器関連肺傷害(VALI)
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