心臓の電気伝導系の仕組みと役割を解説

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心臓はただのポンプではなく、「心臓自身の脳」によって拍動が調整されています。
この調整を司るのが「電気伝導系(Cardiac Conduction System)」です。心臓がリズミカルに血液を送り出すためには、この電気的なネットワークが欠かせません。

刺激伝導系とは?

これは、特殊化された細胞の集まりで、心筋の収縮をタイミングよくコントロールします。主要構造は以下のとおりです:
  • 洞房結節(SAノード):心臓の自然のペースメーカー
  • 房室結節(AVノード):信号を一時的に遅延させ、効率的な収縮を調整
  • ヒス束(Bundle of His):心房から心室へ信号を伝える主要経路
  • 左右脚(Bundle Branches):ヒス束から左右の心室へ分岐
  • プルキンエ線維(Purkinje Fibers):心室全域に素早く信号を広げる網
これらが協調して働くことで、心臓は効率的に収縮し、血液を拍出するのです。

電気信号の流れ(1拍ごとのシーケンス)

  1. SAノードが自発的に電気インパルスを発生(通常60〜100回/分)
  2. インパルスが両心房を経由し、心房収縮を引き起こす → P波に相当
  3. 信号はAVノードに達し、わずかに遅延 → 心房からの血液が完全に心室へ流れ込む時間を確保
  4. 遅延後、ヒス束を経由し、心室中隔に電気信号が伝搬
  5. そこから左右脚 → プルキンエ線維へと分岐し、心室全体に同時に伝わることで協調した収縮が可能に
このように、心電図におけるP波 → PR間隔 → QRS波は、この電気的な一連の流れを反映しています。

構造の詳細と特徴

洞房結節(SAノード)

  • 右心房上部に位置する特殊筋細胞群で、自律的にインパルスを発生
  • 基礎心拍数を司る天然ペースメーカー
  • 自律神経(交感神経・副交感神経)やホルモンによって活動が調整されます

房室結節(AVノード)

  • 心房から心室への唯一の 電気的連絡路であり、避雷板のような役割
  • 一定の遅延(約0.1秒)によって心房‐心室間の収縮タイミングを整える

ヒス束・脚・プルキンエ線維

  • ヒス束:AV節から心室中隔へ電気を伝える蜂の巣のような経路
  • 左右脚:さらに細分化して左右それぞれの心室へ導く
  • プルキンエ線維:心室内を網目状に走り、拡張的かつ高速に伝導 → 一斉収縮を実現

和名略語英名
洞房結節SN もしくは SA nodeSinus Node もしくは Sinoatrial Node
前結節間路Anterior Internodal Tract
中結節間路Middle Internodal Tract
後結節間路Posterior Internodal Tract
バッハマン束Bachmann’s Bundle
房室結節AV NodeAtrioventricular Node
His束HB もしくは AV BundleHis Bundle もしくは
Atrioventricular Bundle
左脚後枝LPFLeft Posterior Fascicle
左脚前枝LAFFascicleLeft Anterior Fascicle
左脚LBBLeft Bundle Branch
右脚RBBRight Bundle Branch

と、心房の中の心拍数というのは 400〜500回になります。これがそのまま心室に伝わると大変なことこのような心房の有害事象が、そのまま心室に及ぶことを防ぐ、房室結節の役割になります。

房室結節はゆっくりと伝導する、さらに心房の心拍数が速くなればなるほど伝導しづらくなる、これが「減衰伝導」の特性 

生理学的意義と調整機構

  • 電気的絶縁化:心房と心室は心臓骨格の結合組織によって厳密に区分されており、信号がAVノード経由でしか流れません。これにより不随意な伝導を防ぎます
  • 自動能:SAノードだけでなく、AVノードやヒス束も予備の発火源として補充調律(40~60 bpm/20~40 bpm)を担う機構があります
  • 交感・副交感神経による調整:運動時やストレス下では交感神経が信号伝導を早める、副交感神経が抑制することで心拍変動を調節する

臨床との関連:不整脈や伝導障害

  • 房室ブロック:AVノードまたはヒス系の障害により、信号が遅延または遮断される → 心拍の乱れ、時にペースメーカーが必要になる
  • 脚ブロック(Bundle Branch Block):左右どちらかの脚で信号伝導が遅れることで心室の収縮が非同期に。軽症では症状がなく、管理対象となる場合もあり
  • ペースメーカー補助:SAノードやAVノードの機能不全に対しては人工ペースメーカーによる補充が行われることがあります

まとめ

項目内容
主な構造洞房結節房室結節 → His束 → 左右脚 → Purkinje線維
信号の流れ心房に始まり、遅延を経て心室へ広がる
生理的意義効率的な血流促進/自動能/神経調節
異常時ブロック、不整脈、補充脈、ペースメーカー治療等



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ペースメーカの刺激伝導系

参考
https://med.toaeiyo.co.jp/contents/arrhythmia-seminar/sample/mechanism-sample.html

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